「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

「電波オークション実施」発言の余波《前編》

原口一博大臣が“打ち上げた花火”はいかに?

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2010年5月6日(木)

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 昨秋の政権交代後、2011年7月の地上アナログ放送停止(地デジへの移行)という一大事業を控え、一時期は無風と思われていた通信行政だが、このところ総務省の原口一博大臣や内藤正光副大臣の発言が極めて活発かつ刺激的だ。

 先日も、SIMロック解除の強制という、ケータイ産業にとっての“大玉”を打ち上げてきた。また「光の道構想」では光ファイバーによるブロードバンドの全国民への完全普及を目指し、これに関連する形でNTT再々編議論にも火を点けた格好となっている。筆者もこれまで「政権交代にかかわらず、総務省は放送行政に手一杯」と述べてきた手前、「さすがに今回は読みが外れましたね」と業界関係者に同情されることもある。

 そうした中、今回もまたぞろ原口大臣から「電波オークション導入の検討」という“大玉”が打ち上げられた。これがSIMロック解除規制のように「規制は見送り」という努力目標の設定だけで終わるのか、あるいは実際にオークションの導入までたどり着くのかは現時点では定かではないが、これまでと同様に活発な議論が繰り広げられることは間違いないだろう。

 まして今回、この電波オークション検討の動きと足並みを揃えるように、ヤフーとモバゲータウンを運営するDeNAの戦略提携が発表された。もちろん両者は本来は別々の動きであり、タイミングが揃ったのは単なる偶然であろう。業界の趨勢として並べて考えてみると、この2つの動きが緩やかに呼応しあい、1つの潮流の中にあるようにも、筆者には感じられる。

 そこで今回と次回の2回にわたって、この潮流がもたらす日本のケータイ産業の方向性について、シミュレーションをしてみたい。

電波オークションが「電波行政の“大玉”」のワケ

 電波オークションという言葉に馴染みがない読者もいるだろう。まずは簡単に、おさらいをしておこう。

 これまでの電波行政は、規制当局の審査に基づく免許制であった。基本的には電波を利用するすべての人(事業者)や機器、あるいは利用環境が、審査の結果として免許を受けることで初めて利用できるという形態である。これは、電波は有限の公共資産であり、その貴重な資産の利用に際しては、公平性の観点に基づいて厳格に管理されるべきとの考え方に基づいている。

 こうした電波行政は、日本特有のものではなく、基本的には世界中どこでも同じ制度運用がなされている。というのは、周波数帯によっては電波は国境を越えて飛んでいくため、国際的なルールが必要だからだ。つい最近も「米国で先行発売されたアップルのiPad(アイパッド)を日本国内に持ち込んで無線LANの通信を行うのは電波法違反である」という議論があった。これは日本に限った話ではない。例えばイスラエルでは日本よりさらに厳しく、iPadの持ち込み禁止措置が講じられていた(現在は解除された)。

 一方、携帯電話を利用したい人は、アマチュア無線のように試験を受けて免許を交付されているわけではない。これは通信キャリアが一括して免許を取得し、明確な運用・管理責任を持って利用者にサービスを提供しているからである。また放送事業も同様で、テレビ局やラジオ局は単に営利団体というだけではなく、規制当局から免許を受けて役務を提供している。

 この際、通信キャリアや放送事業者は、電波利用料という形で免許された電波の利用における費用負担をしてきた。この電波利用料は古くからあった制度ではなく、1993年から導入されたものである。当初は混信などの通信障害の調査や対策を講じるための原資確保を目的として設立されたのだが、現在では電波利用の促進や事業ごとの再配分などの財源ともなっている。

 さて、今回、原口大臣が言及した電波オークションとは、電波免許の割り当てを競売によって決めるという制度である。応札には相応の条件が設定されるので誰しもが参加できるというわけではないが、条件を満たせば、基本的にはオークションのメカニズムなので、最終的に高値を提示した事業者に免許を交付することになる。

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著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

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