佐野元春――。
言わずと知れた日本を代表するロックシンガー。そしてインターネットを通じて先駆的な試みを続けてきた人物としても知られる。国内の有名アーティストとして初めての公式ウェブサイト「Moto's Web Server(MWS)」を開設。初の楽曲の有料デジタル配信も実施した。
その姿勢はデビュー30周年を迎えた今も変わらない。今年3月にはイベントの模様をユーストリーム、ツイッターを活用して中継し、話題を集めた。
国内のCD出荷は11年連続でマイナス成長。今年創立100年を迎える日本最古のレコード会社のコロムビアミュージックエンタテインメントは1月、ネット企業「フェイス」の出資を受け、傘下に入った。エンターテイメント産業全体が大きな業態転換を迫られている。
音楽とインターネットの最先端を走り続けてきた佐野氏の目には今、どのような風景が映し出されているのか。MWSを通じて佐野氏のインターネットを通じた活動をサポートしてきた宮田正秀氏と今井健史氏にも同席してもらいながら、その思いに迫った。
(聞き手は広岡延隆=日経ビジネス記者)
個人が「生中継」をできるようになった
―― デビュー30周年を記念したイベント「アンジェリーナの日」のトークショーの模様をユーストリームとツイッターを使って配信しました。アーティストとしてどんなことを感じましたか。
佐野 30周年のアニバーサリーイベントですので東京近郊だけでなく、日本全国、海外のファンにも共有してほしいと思いました(編集部注:イベントは東京・恵比寿で開催)。
テレビ放送を使って生中継をするのは、個人の力では無理ですよね。でも、今やそれと同等のことがインターネットで簡単にできるようになった。ここに社会の大きな変化を感じます。
我々アーティストは社会の変化の中で生きて創作していますから、人と人とを結ぶインターネット・サイエンスには敏感にならざるを得ない。1つのキャンバスを与えられたのですから、そこでどのように音楽ファンと自分を結ぼうかと考えるのは当然です。
その第1回目の実験をMWSが実現してくれました。僕もそのアーカイブを見て素晴らしいと思いましたね。
レコード会社に代わりアーティストがやる時代
佐野 ユーチューブやユーストリーム、ツイッターを活用した中継やアーカイブは、従来のレコード会社に代わって、アーティストが率先して自らやる時代になった。
CDが売れなくなり旧来型レコードビジネスは非常に厳しい状況です。その中で何か新しいものを見つけるという、未来への希望の旅ですよね。クリエーターと音楽リスナーのため、文化のためです。
レコード会社やアーティストなど、それぞれが知恵を出しあって実践すればいい。そう思っています。
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