「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

iPadが示す「リアル・ソーシャル」の萌芽

業態を超える「高次元への競争」の号砲が鳴った《前編》

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2010年5月27日(木)

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 米アップルの「iPad(アイパッド)」の日本発売が、いよいよ明日(5月28日)に迫った。米国ではいまだ品薄状態が続き、日本でも予約開始から3日で受付終了と、期待感は相変わらず高まっている。SIMロックを巡る一件では、世界中で日本のみ例外的にSIMロックを施した状態で発売されるという異常事態により、いささかミソをつけた格好とはなったが、マスコミ各社が大々的に取り上げたことで、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の日本発売時とはまた異なる熱気を帯びているように感じる。

 筆者も既に何度かじっくりと触る機会を得たのだが、たまたま子ども(未就学)も同席させてもらった際に、とにかく食いつきがいいことに驚いた。もとよりiPhoneが子どもへのウケがいいことは知っていたが、やはり画面が大きいことで操作性や視認性が格段に向上しているのだろう。すなわち、iPhoneよりもさらに「自分が動かしている感」をダイレクトに受けるのである。

 おそらく日本の消費者も、こうしたiPadの楽しさを直感的に感じ取ったのだろう。販売店での予約の行列を見かけた人や周囲の声を聞いても、異口同音に「iPhoneの時とは違い、いわゆる中高年のお客さんが男女を問わず少なくなかった」という反応が返ってきた。これまでも筆者は、iPadをはじめとしたパッド型(タブレット型)端末はノンPCの旗手となると主張してきたが、これが裏付けられた格好でもある。

日本のネット利用を増やすという期待

 パッド型端末の台頭は、これが本当に普及するとしたら、特に日本においては、大きな意味を持つ。1つは、これまでパソコンベースのウェブに馴染めなかった人たちをインターネットの世界に引き込むことになるからだ。

 日本のネット利用は、実は先進国で極めて遅れているほうの部類に入る、と筆者は考えている。総務省が発表する統計のトレンドとは異なることから、異論反論も十分にありうる見解だという断りを入れたうえでの話なのだが、「週に2〜3回程度パソコンでヤフー!を眺める」という大甘の条件設定で、現状を比較的厳しめに眺めると、おそらく日本でパソコンベースのウェブを利用している人は、3000万〜4000万人程度(つまり人口の4分の1程度)しかいないのではないか、と考えている。

 光ファイバーやADSLがこれだけ普及したと喧伝されているのにおかしいのではないか、と思われるかもしれない。確かにそうなのだが、その光ファイバーやADSLがちゃんと接続されているのか、あるいはそれがパソコンに接続されてウェブを使いこなすところまで届いているのかは、率直に言って怪しい。そもそもADSLの普及期には、駅前でモデムをタダでばらまくという商法がはびこっていた。あるいは光ファイバーにしても、実はパソコンではなく、NTTぷららの「ひかりTV」のようなIPTVサービスのインフラとしてのみ使われているケースも少なくない。

 もちろん、それがすべて悪いということではない。ばらまかれたADSLモデムが押し入れの奥で眠っているなら問題だが、別に光ファイバーを敷設したからパソコンを使いこなさなければならないというわけではない。それがIPTVとして使われているとすれば、むしろそれはインターネット技術の成熟を意味する。

 ただそれでも世界的に見て、ウェブが社会の情報インフラとして米国のみならず先進国で定着し、ちょっとした調べ物から行政サービスまで幅広く定着しているのに比べると、やはりそれが使いこなせていないというのは残念である。実際、筆者はお手伝いしている案件の関係で、OECD(経済開発協力機構)の会議に時折顔を出す機会があるのだが、海外政府担当者と雑談していても、日本のウェブ利用が先進国の中で遅れていることが話題になるような始末である。

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著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

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