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「抗体が薬になる」と思っていなかった

中外製薬「国産初の抗体医薬品『アクテムラ(トシリズマブ)』」(その2)

2010年6月23日(水)

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前回のあらすじ

 世界で初めて承認された国産初の抗体医薬品「アクテムラ(商品名。一般名は「トシリズマブ」)」。アクテムラは関節リウマチに効果のある医薬品として世界70カ国以上で承認され、およそ、25カ国以上で発売(2月3日現在)されている。

 このアクテムラを開発した中心人物が中外製薬プライマリー学術情報部部長の大杉義征だった。もともと全く別の切り口から研究を始めていたが、世界中どこにもない研究だけに困難を極めていた。そこに一筋の光明が・・・。

 学会で発表されたのであれば、大杉だけでなく、当然、ほかの研究者たちもその画期的な発見に飛びついたはずである。

 なのに、結果的に、大杉らが世界で初めて承認された国産初の抗体医薬品であるアクテムラの創薬にたどり着けた理由とは何だろうか。

基礎研究があったからヒントを読み取れた

 その点についての大杉の答えは意外なものだった。

大杉 まだ世の中は気がつかない。その論文1本を見ただけで「B細胞阻害剤をやったらリウマチの薬になる」と考える人は、1986年時点ではいなかったと思います。

筆者 そういうものなんですか?

中外製薬プライマリー学術情報部部長の大杉義征氏(写真:佐保 圭、以下同)

大杉 心房内粘液腫において認められる自己免疫疾患の症状に関係があることははっきりしましたが、では、関節リウマチという病気とIL-6がどれくらい関係しているのかということは、その論文からは読み取れないですよ。我々は実験用のマウスで何十年も研究してきたから、読み取れた。綿々と、コツコツと基礎の研究を続けてきたということが、いかに大事かということです。

筆者 そういう基礎研究の積み重ねのない人間にとっては、目の前にある宝が宝に見えない・・・。つまり、その発表に出会う“幸運”だけでなく、発表された論文の本来のテーマ以外のところに新たな価値を見出す力が必要だと?

大杉 それを“セレンディピティ”と言うんです。僕は、あんまり好きな言葉じゃないんですが(笑)。

筆者 発表を聞いて「関節リウマチの治療薬になる」と確信した?

大杉 確信とまではいきませんけれど、これをやるのが一番だと思いました。実際、その時に岸本先生(大阪大学の岸本忠三)との共同研究を決めた時点で、ほかのことは全部捨てて、「IL-6阻害剤」に絞りましたから。

 その言葉通り、大杉はすぐさま岸本を訪ね、共同研究を願い出た。それは、産学別々に進行していた基礎研究が融合した瞬間だった。

 こうして、大杉が免疫学を学び始めて17年、自己免疫疾患の医薬品の開発を目指し始めて8年、B細胞阻害剤に的を絞ったプロジェクトが始まってから5年の歳月が流れた1986年、大杉は恰好の疾患標的分子に遭遇し、阻害薬開発という夢に向かって、確かな第一歩を踏み出した。

 その後も、研究開発には様々なハードルが現れ、失敗や試行錯誤が繰り返されてゆくが、産(中外製薬)学(大阪大学)連携のもと、IL-6と自己免疫疾患の研究はさらに進み、やがて、IL-6がB細胞を形質細胞へと変化させ抗体産生させるシグナルをどのようにして送っているか、その仕組みも明らかにされた。

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