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東京大学総長が語る「新しい知、新しい教養」

知識の有無は問題ではない。知識と知識をつなげ、立ち向かう力

  • 秋元 志保

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2010年6月29日(火)

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2008年10月、東京大学は世界に通用する次世代のビジネスリーダーを育成するプログラム「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)」を開講した。東大が持つ最先端の豊かな知的資産を活用したプログラムで、“日本を背負うビジネスリーダーの輩出”を目指している。

マネジメントやコミュニケーションを学ぶ時間もあるが、「教養・智慧」が全体の約70~80%を占め、その内容は多岐にわたる。

なぜいま教養や智慧が必要なのか。
新しい知の提供を模索する東京大学は、いまの日本をどのようにみているのか。

東京大学総長濱田純一氏にお話しを伺った。

東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)
 主に40歳代の企業人や行政官の幹部候補生などを対象に、東京大学が持つさまざまな分野における最先端の知を活用し、深い教養や智慧と実践的で柔軟な実行力を併せ持つ、高い総合能力を備えた人材を育成するプログラム。
 受講期間は6カ月、費用は600万円、定員25名。毎週金曜日と土曜日の終日行われる。プログラムは「教養・智慧」「マネジメント知識」、「コミュニケーション技能」で構成され、全プログラムの約70~80%を「教養・智慧」が占める。
 2008年10月に第1期開講。2010年4月から第4期が開講中。2010年10月には第5期が開講される(第5期の説明会は6月30日)。

知識と知識をつなぐヒントを与える

濱田 純一(はまだ・じゅんいち)
東京大学総長
東京大学新聞研究所教授、同大学社会情報研究所教授、同大学院情報学環長、学際情報学府長を経て、2005 年から2009 年3 月まで同大学理事・副学長を務める。同年4 月より、現職。専門は情報法、情報政策。
主著書は、『メディアの法理』(日本評論社1990)、『情報法』(有斐閣 1993)、『放送制度論のパラダイム』(共著・東京大学出版会 1994)、『情報学事典』(共編著・弘文堂 2002)など。

濱田:日本は天然資源が乏しい国ですが、経済が伸び盛りの頃は労働力があり、一定のスキルがあればどんどん生産力を高めることができました。ところが、いまはスキルだけでは生き残れない時代になっています。

特に、グローバル化時代には、さまざまな価値観や考え方が社会のあらゆる場面に埋め込まれます。それらをビジネスモデルに取り込んでいくには、テクニック的なスキルだけではなく、幅広い知識や目配りが必要です。ここで言う知識とは、表層的・断片的な知識ではなく、私たちが教養・智慧と呼んでいる、歴史や国際社会の切磋琢磨に裏付けられた重みのある知の体系のことです。

国際競争が激しくなっている現代では、ちょっとした知識やアイデアだけでは通用しません。多様な知識が結び付いた総合的な知識が求められているのです。その知識を身に付けることによって初めて、世界に通用する創造力は生まれてくるものだと思います。

NBO:インターネットの普及によって手に入れられる情報量は格段に増えているので、世界に通用する創造力が生み出しやすい環境とも言えますが、厳しい時代のせいもあるのか、自分も含め、それを生かせているのだろうかと疑問に感じることがよくあります。

濱田:私もそう感じることがあります。それはたぶん個々の知識と知識が結びつかなくなっている、俯瞰できない、体系化できない状態になっているからではないでしょうか。あるいは、個々の知識を自分の考え方や頭の中にある知識のプールにどうやって放り込めばいいのか分からない。そのあたりじゃないかと。

知識と知識をつなげて総合的に把握できる力を持っている人もいますが、そういう人であっても考える時間やきっかけがないということがよくあります。

考える時間があってこそ、試行錯誤をしながらひとつの知識と別の知識を結び付けながら、解決策や新しい発想を見つけることができるのです。

けれど、これには時間がかかります。そこで、「この知識とこの知識はここでつながっている、こうつなげば今持っている知識がもっと豊かに展開できる」、とつなぎ目を作る手掛かりを、言い換えれば、知の枠組みを広げる手伝いを、東大は提供していきたいと考えています。

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