「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

iPhone 4とルネサス、そしてSIMロック解除をつなぐ“糸”

相次ぐニュースが示す「乱世」の予感

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2010年7月8日(木)

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 去る6月24日、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の最新機種である「iPhone 4」が、全世界で発売された。米アップルの発表によれば、発売開始後3日足らずで全世界合計170万台を出荷したという。端末販売の伸び悩む国内メーカーにしてみれば、垂涎ものの記録だろう。

 ところが現在、iPhone 4に関する話題の中心は、こうした華々しいセールスではない。iPhone 4の無線通信機能が低く、端末の持ち方によって通信状態が変わり、場合によっては通信が途切れるという症状が、米国を中心にあちこちで報告され始めているのだ。

 この問題、当初は精密機器にありがちな初期不良であり、行列をなしてまで手に入れたいアップルファンならばそんな懸念を気にすることなく買い求めるだろう、と筆者も考えていた。しかし症状の報告を知れば知るほど、これはそう簡単に改善できない構造欠陥である可能性が読み取れた。

 そしてそれを裏付けるように、米国では早くもアップルに対する集団訴訟が起こされた。さらにアップル側の対応の拙さも批判の対象としてやり玉にあげられ、米国ではiPhone 4の返品に応じることになった(日本については対応を協議中)。どうやらこれまでの初期不良とは、状況が全く異なるようだ。

 一方、日本の半導体大手のルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)が、ノキアの通信用中核部品のワイヤレスモデム事業部門を買収することが発表された。買収金額は2億ドルで、買収内容には知的財産や評価試験装置、また同部門の技術者1100人の受け入れも含まれている。

 今回の対象となるワイヤレスモデムは、ケータイ端末のデータ信号を通信方式に合わせて変換する部品で、ケータイ端末の通信機能を司る「心臓」そのものである。従来はルネサスがノキアからライセンス供与を受け、モデムをシステムLSI(大規模集積回路)に搭載してきた。この買収を受けて、米クアルコムやスウェーデンのSTエリクソンなどが参戦する3GやLTEなどの「ガチンコ勝負」に、ルネサスが日本勢として正式に名乗りを上げることになる。

 この2つのニュースは、極めて対照的であるのと同時に、今後のケータイ産業のあり方を占ううえでも極めて重要な動きである。そしてその問題意識は、先日のNTTドコモの「全機種SIMロック解除宣言」ともつながっているように、筆者には思えるのである。

通信の苦手なケータイ?

 まずiPhone 4の不調について、おさらいしておこう。いくつかの症状が報告されているようだが、共通しているのは「端末の持ち方」によって通信状況が変わるということである。そしてこれに伴って、体感される通信状況も変化し、場合によっては通信が途切れることがあるようだ。

 これに対しアップルは公式発表として、

iPhoneに限らず多くのケータイが持ち方によって受信状況が変わることがある
iPhoneの電波の強さ(電界強度)を表示するバーの計算式が間違っていた
このため電波の弱い地域でも電波が強く受信できるような表示になっていた

 として、この計算式を修正するソフトウエアアップデートを「近日中に提供する」と表明した。すなわちアップルの言い分としては、「あくまで表示の問題である」ということだ。

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著者プロフィール

クロサカ タツヤ(くろさか・たつや)

クロサカ タツヤ 1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2007年1月に個人事務所を開設。現在は戦略立案や事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策などのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。クロサカタツヤ事務所代表、株式会社企(くわだて)代表取締役。



このコラムについて

クロサカタツヤのケータイ産業解体新書

19世紀がヒトとモノ(物質)、20世紀がマネー(金融)のエコノミーだとしたら、21世紀は何か。この質問に対する、有力解の1つは「ビット(情報)のエコノミー」だろう。現実に、中南米やアフリカを視野に入れたケータイの普及という形で、ビット・エコノミーを構築しようと国や企業が動き始めている。「ガラパゴス」日本にチャンスはあるのか。世界で思惑がうごめくケータイ産業の最前線を描く。

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