「クロサカタツヤのケータイ産業解体新書」

“ノキア・シーメンス+モトローラ”の衝撃

日本のケータイ市場にとっても他人事ではない

  • クロサカ タツヤ

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2010年7月22日(木)

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 前回(「iPhone 4とルネサス、そしてSIMロック解除をつなぐ“糸”」)で、日本の半導体大手のルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)によるノキアの通信用中核部品のワイヤレスモデム事業部門の買収に触れたばかりだが、今回も大型のニュースが飛び込んできた。

 フィンランドのノキアとドイツのシーメンスの合弁会社ノキア・シーメンス・ネットワークス(以下、ノキア・シーメンス)が7月19日、米通信機器大手モトローラの無線インフラ事業の大部分を12億ドルで買収することを発表した。

 モトローラといえば、ケータイ端末、基地局、セミコンのすべてを手がけ、米国では民生のみならず軍需産業をも手がける、総合的な通信機器ベンダーである。日本との付き合いも長く、その名を耳にした人は少なくないだろう。一方のノキア・シーメンスは、本連載の読者なら言わずと知れた、世界第2位のシェアを誇る基地局ベンダーである。

 このところ、基地局やセミコンといった、ケータイ産業を支えるプレーヤーたちの動きが激しさを増しているが、今回の一件は日本のケータイ市場にも直接的な影響を与えることになろう。そこで今回は、この買収が各方面に及ぼす影響を考察しつつ、その背後にある大きな潮流についてまとめてみる。

必ずしも競合ではなかった

 事実関係をおさらいしておくと、今回ノキア・シーメンスは、モトローラの無線インフラ事業の主要部分のほとんどを手にすることになる。この中には、GSM、CDMA、W-CDMA、モバイルWiMAX、LTEなどの方式が含まれる。記者会見でノキア・シーメンスのラジブ・スリCEO(最高経営責任者)はその目的を「顧客基盤の獲得」としており、今回の買収がノキア・シーメンス側の事業拡大を目的としていることがうかがえる。

 確かに買収の目的は、記者会見で説明された通りだろう。先日のルネサスとノキアの買収金額である2億ドルに比べると、そのおよそ6倍の12億ドルという規模の大きさが注目されるが、これは単純にモトローラの事業規模を反映したもの。例えば従業員数を見ても、ノキアの1200人に対してモトローラの7500人と6倍近い。

 基地局という商材には、「規格が一度決まってしまえば後は大規模生産による大量供給」というイメージがあるかもしれない。しかし実際は、国ごとに細かく異なる周波数や通信規格への対応、納入先の通信事業者に割り当てられた周波数への調整、電源や電波塔といった既存資産との摺り合わせ、さらにはノンストップの運用を実現するための保守点検が必要となる。

 そんなきめ細やかな開発・営業体制を必要とする基地局ビジネスを、モトローラは世界展開していた。彼らが有する商圏は、米国はもちろん、中国やインド、あるいは日本にも及び、各地で事業や研究開発を進めていた。その中核は、CDMAと呼ばれる通信規格で、日本ではCDMA方式を採用するKDDIが主要顧客となる。

 こうした市場で、モトローラとノキア・シーメンスとは必ずしも競合しておらず、場合によっては補完関係にあった。そしてモトローラ率いるCDMA陣営は、次世代規格の開発を概ね見送りつつあったため将来性に不安が生じており、業績も低迷していた。モトローラ全体としてみれば、ノキア・シーメンスからの買収提案は、渡りに船というところだろう。

 今回の買収によってモトローラの基地局ビジネスに残るのは、iDENなどの通信関連技術の一部に過ぎない。その詳細は明らかでないが、おそらくはセミコンダクターとの関係性が強い領域と、ナショナルセキュリティに直結する領域を残して、ほぼ全面的にノキア・シーメンスに売却したということになる。モトローラにとっては、市場における立ち位置を抜本的に変える大規模な事業再編ということになる。

エリクソンの狙いを再認識

 一方、ノキア・シーメンスは今回の買収によって、何を手にしたのか。これには、攻守両方の意味があると考えている。

 まず「攻め」のほうでは、世界中の商圏とその先にある顧客基盤の獲得であろう。前述の通り、モトローラは日本を含む世界市場で顧客を有している。そしてそれらの多くはCDMA陣営なのだが、CDMAの発展が止まった現在、KDDIがLTE採用を表明しているように、顧客企業は遠くない将来にLTEをはじめとした次世代技術への世代交代を迫られる。

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