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スマートフォンが招くインフラ地殻変動の兆し

2010年後半の潮流を探る《前編》

  • クロサカ タツヤ

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2010年8月5日(木)

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 早いもので、2010年も既に8月に入ってしまった。以前から再三触れているように、今年を挟んだ前後2年程度は、ケータイに限らず情報通信の世界の激変期を迎えているのだが、それを証明するかの如き激しい動きが、日本はもちろん世界的にも続いている。

 先日も日本経済新聞で「周波数オークションの導入に向けた検討着手」という報道がなされた。またマルチメディア放送を巡るNTTドコモ陣営(マルチメディア放送[mmbi])とKDDI陣営(メディアフロー企画)の火花を散らす「バトル」も、あちこちで触れられている通り。また海外に目を向ければ、本連載でも取り上げてきたように大型M&A(合併・買収)や事業売却が進んでおり、日本もその中のプレーヤーかつ市場として渦中の存在となっている。

 一方、こうした激動の結果、いくつか雌雄が見えてきたこともある。今回と次回は、そのいくつかの動きを取り上げながら、2010年後半以降の潮流を検討してみたい。

「主流はLTE」がはっきりした

 まず、現世代(日本では3G)に代わる、ケータイの次世代規格について。これは概ねLTE(ロングタームエボリューション、3.9G規格)に収束したと言えよう。以前から指摘してきたことだが、この流れは昨年末から顕在化しつつあり、2月にスペイン・バルセロナで開催されたケータイ産業の世界的な展示会「モバイル・ワールド・コングレス」でも既にコンセンサスになりつつあった。この動きが日本にも正常に波及した、ということである。

 この次世代規格の地位を争っていた規格の1つに、モバイルWiMAXがある。日本ではUQコミュニケーションズが商用化しており、テレビコマーシャルや通勤電車内の広告などでもお馴染みだろう。残念ながら市場導入はあまり芳しくない状況ではあるが、モバイルWiMAX自体は半導体大手の米インテルが世界的に支援していることもあり、ノートパソコンなどへの組み込みも進んでいることから、特定の市場分野もしくはLTEの補完的な位置づけをうかがいながら、当面サービスが進むことになるだろう。

 一方、こうしたモバイルWiMAXやウィルコムが開発したXGPなどの高速データ通信規格が、TD-LTEと呼ばれるLTEの流派の1つと技術的に親和性があることは、前回(「“ノキア・シーメンス+モトローラ”の衝撃」)に説明した通り。TD-LTE自体が中国を中心に世界的な盛り上がりを見せ始めつつあることから、各規格が共通して採用しているTDD(時分割複信)の陣営として呉越同舟する可能性も否定できない。

 こうなるとLTEという括りでは「花盛り」ということになっていくが、実際にはここまでITU-Rでそれぞれ別の規格として標準化されていること、またそれを受けて日本でもそれぞれの規格を前提として免許交付されていることなどから、規制当局が今後どのように対応するかは定かでない。

 また、現世代(3G)とLTE(3.9G)の間を埋める技術として、HSPA+(3.5G)といったアップグレード版規格も存在する。こちらは現世代インフラとの親和性が高いことから、低コストでインフラを進化させることができるため、設備投資余力に限界のある事業者などからの注目を集めている。とはいえ、次世代規格が急速にLTEに絞られた背景に、スマートフォン利用をはじめとしたトラフィックの急激な膨張があり、もはや3.5G技術はその場しのぎに過ぎないため結果的に「ムダ金」になるという声も通信事業者からは聞かれ始めているのも事実。裏返せば、そのくらいLTEへの動きは加速しつつある、ということだ。

LTEにどうたどり着くかが課題

 以上をまとめると、次世代規格は概ねLTEで安泰、ということになりそうだ。ただ、大勢としてはそう言えるのだが、筆者は必ずしも状況を楽観視していない。というのは、LTEのスループットが「夢の高速無線通信」と喧伝されているほどには、少なくともサービスイン当初は期待できないからだ。その理由は、利用できる周波数帯域。

 どんな無線通信規格であっても、1回の通信に多くの周波数帯域を利用できれば、それだけ一度に転送できる情報量が増えるので、品質は向上する。反対に帯域が狭ければ、品質向上には限界がある。端的に言えば、道幅と交通量、川幅と流量の関係に似たような話である。

コメント1件コメント/レビュー

コンテンツのエコシステムを自ら構築・運用することができない多く(?)の通信事業者は、アップルやグーグルが構築するコンテンツ・プラットフォームに依存せざるを得ない。エコシステムという名前の通り、コンテンツ・プラットフォームは運用次第では大金を生むシステムだ。これを自前で持たない通信事業者は、プラットフォームを下支えする『土管』に徹するしかない。▼『土管』に大金を払う客はいない一方で、「ここには土管が来てない」「土管が細すぎて水が流れない」などの不満は客が増えれば増えるほど増加する。だが、そういう事業者に限って、アップルやグーグルをお断りできない。彼らをお断りすれば、お客も一緒に逃げてしまい、土管が干上がってしまうからだ。▼交渉相手としてはタフな事業者よりも、足下を見ることができる事業者を選ぶ方が楽だ。販売数量のノルマは何十万台、モックアップ展示は禁止、独立した売り場を義務づけ他社携帯と並べた販売は禁止、など屈辱的な条件を飲ませることもできる一方、コンテンツ・プラットフォームから上がってくる収益をしっかり確保できる。そんな屈辱的な販売条件をクリアするために、端末実質無料+キャッシュバックなど、販売奨励金を大量に積み上げスマートフォンを投げ売りせざるを得ない事業者もあるようだ。▼外国メーカの利潤確保、外国メーカへお金を吸い上げるエコシステムの確立のために下働きをする通信事業者という存在は、少子高齢化21世紀の日本の企業としてはいかがなものだろうか。社会的な存在意義を疑う。(2010/08/05)

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コンテンツのエコシステムを自ら構築・運用することができない多く(?)の通信事業者は、アップルやグーグルが構築するコンテンツ・プラットフォームに依存せざるを得ない。エコシステムという名前の通り、コンテンツ・プラットフォームは運用次第では大金を生むシステムだ。これを自前で持たない通信事業者は、プラットフォームを下支えする『土管』に徹するしかない。▼『土管』に大金を払う客はいない一方で、「ここには土管が来てない」「土管が細すぎて水が流れない」などの不満は客が増えれば増えるほど増加する。だが、そういう事業者に限って、アップルやグーグルをお断りできない。彼らをお断りすれば、お客も一緒に逃げてしまい、土管が干上がってしまうからだ。▼交渉相手としてはタフな事業者よりも、足下を見ることができる事業者を選ぶ方が楽だ。販売数量のノルマは何十万台、モックアップ展示は禁止、独立した売り場を義務づけ他社携帯と並べた販売は禁止、など屈辱的な条件を飲ませることもできる一方、コンテンツ・プラットフォームから上がってくる収益をしっかり確保できる。そんな屈辱的な販売条件をクリアするために、端末実質無料+キャッシュバックなど、販売奨励金を大量に積み上げスマートフォンを投げ売りせざるを得ない事業者もあるようだ。▼外国メーカの利潤確保、外国メーカへお金を吸い上げるエコシステムの確立のために下働きをする通信事業者という存在は、少子高齢化21世紀の日本の企業としてはいかがなものだろうか。社会的な存在意義を疑う。(2010/08/05)

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