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混沌から救うのは「弥太郎より市兵衛」

運は大切だが、やり遂げるには愚鈍さと根気が必要

  • 佐藤 紀泰

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2010年9月1日(水)

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 日本屈指の名門企業とされるのが創業1875(明治8)年の古河機械金属である。創業者は裸一貫から、日本の「鉱山王」と呼ばれるまで事業を拡大した古河市兵衛だ。足尾銅山を開発し、旧古河財閥の礎を築いた。そこから、古河電気工業や富士電機ホールディングスなど数多くの企業が育っていった。

 その財閥を築いた古河市兵衛についてはあまり知られていない。だが、その基本的な考え方は混沌の時代にある日本の産業界にとって参考になるのではないか。古河グループの源流企業である古河機械金属の相馬信義社長に、市兵衛の哲学と、その遺伝子を受け継ぐための経営について聞いてみた。

(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)

 まず、インタビューの前に、市兵衛の素顔について簡単に説明してみたい。

古河機械金属の創業者である明治時代の鉱山王、古河市兵衛

 古河市兵衛は1832年、京都で生まれ、その後に丁稚奉公や行商に従事した後で、生糸貿易などを生業とした小野組の番頭だった古河太郎左衛門の養子となる。小野組はその後に倒産した。ただ、市兵衛は小野組が所有していた新潟県の草倉銅山を買い取って経営に乗り出した。鉱山事業進出には盟友であり、第一国立銀行の責任者も務めた渋沢栄一の支援があった。そして、その後に、草倉鉱山で得た資金で、すでに採掘され尽くしたと思われていた足尾銅山を買収した。周囲は誰もがこの買収に反対したが、新鉱脈を次々に発見した。日本の銅生産の3分の1ぐらいを占めたとされる。

 市兵衛が足尾銅山で成功できたのは、新技術を精力的に取り組んだことが大きい。例えば、1890年には日本で初めての水力発電所を建設し、足尾銅山内の作業で電化を実現した。この結果、廃水処理などが容易になり、生産性を一挙に高めることができたのだという。当時の有力雑誌でも、最も人気のある経営者として選ばれたのは三菱グループを築いた岩崎弥太郎ではなく、市兵衛だった。

 市兵衛はその後、「鉱毒王」とも言われ、日本全国から批判された。それは足尾銅山の鉱毒問題だ。元衆議院議員だった田中正造が明治天皇に直訴を試みたことでも有名だ。これは足尾銅山周辺の渡良瀬川流域では銅の生産過程で出てくる有害物質が人体や農作物に大きな影響を及ぼしていた。明治政府は大規模な予防工事を命令した。市兵衛は私財を投げ打ち、半年間で60万人近い労働者を投入した。鉱毒問題は他の鉱山でも起きていたが、真っ先に責任を認めて、対策に動いたのは市兵衛だった。

 市兵衛が残したのが「運鈍根(うんどんこん)の教え」である。これは人間にとって最も大切なのは運だとしても、何か重要なことをやり遂げるには愚鈍さと根気が必要だと言うことである。これは古河機械金属という企業にとっても、受け継がれている考え方なのだという。

スピードの時代こそ、運鈍根の教えを徹底

 ―― 古河市兵衛の教えをどのように経営に生かされているのでしょうか。

 相馬 創業者の市兵衛は新しい技術への飽くなき挑戦心を持っていました。これは私のモットーとすることでもあります。

 現在はスピードの時代だと言われたりします。しかし、混沌とした時代だからこそ、運鈍根のような考え方が重要なのではないでしょうか。本当に難しい技術などに挑戦する場合には、徹底的に準備をして、やり抜く覚悟を持つ必要があります。浅い経験だけでは通用しません。

画像のクリックで拡大表示

 ―― 市兵衛が足尾銅山でやったことも、技術への挑戦でしたね。

 足尾銅山からの銅の精錬で出てきた硫酸の煙により、周囲ではげ山になったりしました。そこでは市兵衛が外国の技術を見まねで高い煙突を作ったりしました。日本で最初の水力発電所を作って、銅山の構内の電化を進めました。

 新しい技術を他に先駆けてやっていく。それが古河機械の歴史であります。市兵衛の教えです。例えば、現在もうちの削岩機は主力事業ですが、これもドイツから導入して、日本人が使いやすいように改善して、「足尾」式という製品にしました。

 ―― 足尾銅山の鉱毒事件以降、環境技術への取り組みも長い歴史がありますね。

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