業績不振に悩む日本の大企業から、人材の大流出が起きると言われている。大企業では終身雇用などの制度が崩れてきており、サラリーマンとして長くとどまるメリットがどんどん薄れているからだ。
特に、引く手あまたの優秀な技術者は大企業に骨を埋める必要などない。業績不振で厳しい状況に追い込まれても、かつてのように耐えるのではなく、新しい活躍の舞台を見つけることができる。
敗れざる者たちの活躍を後押しするのが、日本でも根付きつつあるヘッドハンティング市場の役割だろう。現在、日本の大企業の部課長クラスを対象に、活発なヘッドハンティングに動いている人材大手レイスの吉村直樹・スカウト推進部副部長に、現状を聞いた。
(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)
―― 大企業の優秀な人材をヘッドハントする転職市場は現在、どのような感じなのでしょうか。

吉村 リーマンショックによって景気が悪化しました。レイスではこうした厳しい状況の中でも成長している有力ベンチャーなどに大企業の部課長クラスの人材を紹介しています。
普通であれば、受け入れる側の企業も業績的には楽ではありませんから、ヘッドハンティング市場はそれほど増えないはずです。しかし、うちでは昨年は600人弱をヘッドハントし、今年は800人ぐらいになりそうです。大企業から技術者など優秀な人材を採用しやすくなっていることが背景の1つなのです。
転職は10年に1度の時代に
それこそ、ソニーとか、三菱UFJフィナンシャル・グループなど、大企業の人材もヘッドハンティングによる転職について前向きに考えてくれるようになりました。私の感じで言わせてもらうと、大企業では平均で、10年に1度は転職するというような時代がやってきているのではないでしょうか。
―― 部課長クラスのヘッドハンティングのニーズはどのような感じでしょうか。
普通、外資系のヘッドハンティング会社は経営トップを狙っています。そうしたニーズは今の日本では激減しています。しかし、部課長クラスは違います。うちのように日本企業が顧客であり、部課長クラスのニーズは景気に連動することなく、安定してあります。
今の大企業ではリーマンショック後で激しいリストラがありました。特に50歳代の社員は会社を愛していたのに、行き場がなくなっている。固定費の削減のために、この世代はどんどんリストラされつつあります。
こうした状況を見ると、若手や中堅の優秀な社員も自分の将来に疑問を持ってきます。それに、最近の成果主義を見ていても、若手とか中堅は活躍しても、十分に報いられません。ですから、大企業を飛び出そうという動きが出てくるのです。
一方、ヘッドハンティングをしたい企業にとっては、そういう時代だからチャンスなのです。だから、部課長クラスへのニーズは底堅いのです。情報誌などを通じて、新規に人材を募集しても、本当に優秀な人材が応募してくれることなど少ないのです。優秀な人材というのは大企業において、それこそ転職など考えられないほど忙しい日々を過ごしているからです。そうした人材に水面下で接触し、転職を考えさせるのが、うちのヘッドハンターたちの腕の見せ所です。
―― どうやって転職を考えない優秀な人材に接触するのでしょうか。
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