「敗れざる者たち」

日本は環境ベンチャーに冷たい

良い技術=成功、とならない日本で起業家を育てるには

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2010年9月3日(金)

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 環境技術立国として日本が復活するためにはベンチャー企業の育成がカギになる――。こう語るのは大阪ガスで研究者として活躍した後で、二酸化炭素回収の透過膜を開発するルネッサンス・エナジー・リサーチの岡田治社長だ。

 岡田氏は2004年に退社した後、資金繰りなどで苦労したが、今では世界が注目する技術を開発できている。日本では米国などと異なり、環境技術を評価するVC(ベンチャーキャピタル)が少ないことが課題であり、岡田氏もそれで苦労した。

 そんな岡田氏を支援したのが住友商事だった。ベンチャー企業と総合商社が強力なタッグを組めば、環境ベンチャーを日本でも数多く育てることが可能かもしれない。ルネッサンスの岡田社長と、住友商事の執行役員である溝渕寛明・新事業推進本部長に聞いた。

(聞き手は佐藤紀泰=日経ビジネス編集委員)

 ―― 二酸化炭素の低コストで回収する透過膜の技術が注目されていますが、2004年にルネッサンスを創業されてから、かなり苦労されたそうですね。

ルネッサンス・エナジー・リサーチの岡田治社長(写真:山田哲也)

 ルネッサンス・エナジー・リサーチの岡田治社長 ええ、日本のベンチャーは良い技術を開発しても、それで成功するとは限らないということが良く分かりました。試験プラントの建設準備に入っていますが、そのための資金でも苦労しました。

 研究開発はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)など公的な資金で100%補助されます。これは素晴らしい。しかし、研究だけではビジネスになりません。その先は実用化のために試験プラントを作る必要があります。しかし、それが集まらないのです。実用化のための試験プラントは設計1年、建設1年、そして運営で1年ぐらいかかり、その後に結果を見て行く必要があります。

 環境技術で成功しようとすれば、このように時間がかかる。だが、それを日本のVCの人たちには理解してもらえない。研究で実績を出しても、それが評価されない。それこそ、外食チェーンのようなところには簡単に投資をするのに、日本にとって重要な環境ベンチャーには冷たいのです。たくさんのVCの人たちにも会いましたが、みんな銀行マンのようなことを言っていますよ。

特許の申請費用でも苦労

 ―― 確かに米国など海外のVCとは違いますね。

 岡田 米国でもそうでしょうが、環境ベンチャーが有望な技術を作りだせば、そこで高く評価され、資金も確保できます。しかし、日本ではそうではない。

 ルネッサンスでは二酸化炭素だけを透過させ、回収できる透過膜について新しい素材を開発しました。2007年にはだいたい、従来の技術と比べて1000倍のスピードで回収できる技術になりました。課題だった寿命も8000時間に向けて順調に伸ばしています。

 それでも、そんな技術はあまり評価されない。それよりも、売り上げがどれぐらいあるのか、とかです。「試験プラントができてから、来てください」なんて、よく言われました。試験プラント建設のためのお金が必要できているのに、ですよ。

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このコラムについて

敗れざる者たち

 日本の産業界では復活どころか、最近の円高の急伸により、再び危機的な状況に追い込まれている。リーマンショック以降は特に顕著だが、日本の世界での存在感が薄れるばかりだ。「技術立国」「モノづくり大国」のような称号すら、忘れ去られつつあるような状況にある。しかし、日本の優秀な技術者たちが持っているイノベーションへの力は全くさびついていない。
 それよりも、その力を生かす経営ができていないのではないか。絶望的な状況に追い込まれても、不屈の闘志で起死回生の技術に挑んで、新しい成長への道を切り開く。そんな「敗れざる者たち」が数えきれないほどいるのが日本という国なのである。
 日経ビジネスオンラインでは、日本を代表する「敗れざる者たち」と、彼らを支える経営者の方々にインタビュー取材した。そこから、技術大国日本の復活について少し考えてみたい。

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