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なぜシャープはあえて「ガラパゴス」と名付けたのだろう

日本のケータイ産業が採るべき道《前編》

  • クロサカ タツヤ

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2010年9月30日(木)

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 去る9月27日、シャープが「GALAPAGOS(ガラパゴス)」という新事業ブランドを発表した。このブランドはシャープの電子書籍事業の名称で、「自社で開発してきた次世代XMDFなどのフォーマットを採用し、端末、オーサリング(編集生成システム)、配信のすべてを提供し、海外展開も視野に入れている」と発表されている。

 この「ガラパゴス」に、業界関係者、また業界に関心のある多くの方は、いろいろな意味で度肝を抜かれたことだろう。まず端末設計が、最近の日本のメーカーには珍しく、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」をかなりきっちりと踏襲してきていること。また経営陣が「市場投入後そう遠くない時期に100万台出荷達成を目指す」とコメントしたこと。そして何より、その名称への驚き、である。

 今回のシャープの戦略については、本連載以外でもあちこちで議論されているであろうから、ここでは触れない。少なくとも筆者は、仮にiPhoneやiPadを真似ていると揶揄されようとも、その良さをきっちりと理解して模倣することは悪いことではないと思うし、100万台出荷もおよそ情報端末で世界に進出するのであれば当然の目標だと思う。

 それでもあえて採り上げた理由は、やはり業界の末席で仕事をしている人間として、あえてシャープがこの名称を選んだことへの驚き、そのものにある。ケータイ業界の重鎮であるシャープともあろうものが、何も知らないカマトトぶって「ガラパゴス」という名称を付けるわけはない。彼らなりの問題提起であろう。ならば、このタイミングで改めてガラパゴス化という問題の本質を整理しておかねばなるまい。

ガラパゴス化は世界のどこにでも起こりうる

 ところで、ケータイ産業(ないしは日本の輸出競争力全般)に興味のある方なら、もはや耳にしない日はないであろう「ガラパゴス化」という言葉だが、そもそもどのような事態を指しているのか。

 野村総合研究所の『「ガラパゴス化」する日本』における定義を、筆者なりに再解釈すると、ガラパゴス化とは、

1. 高度なニーズを有する製品・サービスの市場がある一方、
2. それと異なる、主に機能の要求水準が低いニーズがその市場の外部に存在し、
3. 高度ニーズの市場の独自進化と、低度ニーズの市場進化の間で、ミスマッチが起こり、
4. 一方で低度ニーズのほうが価格競争力や標準化で優位に立つことで、
5. 高度ニーズの市場全体が、世界から見て孤立してしまう。

 という市場状態を指し示すと考えられる。

 前述の野村総合研究所の定義では、主にこの「高度ニーズの市場」を日本としており、つまり日本が世界市場で孤立しているという説明にこのロジックを用いている。もちろん、その事実自体は重要な指摘なのだが、あえて筆者がより一般化したのは、このガラパゴス化という現象の発生は日本市場や特定産業に限らないからである。

 特に先進国では、国内市場偏重の戦略による、市場が国際化した際の競争力の相対的な低下というのは、あちこちの企業で見られる現象である。例えば自動車産業では一時期の「アメリカ車」は完全にガラパゴス化に陥っていたし、現在でも家電製品などでは国によって求められる要件が異なっており、そう簡単に揃うものではない。

 一方で、日本のケータイ産業でこのガラパゴス化という概念がよく使われるのは、特に2000年代(ゼロ年代)後半におけるケータイ産業の実情を分かりやすく説明するロジックとして、まことしやかに流通しているからだろう。逆に言えば、ガラパゴス化の代名詞的なケースとして、日本のケータイ産業が扱われていた、ということである。

 成長を続けていた国内市場で温々と過ごしていたために、海外市場を忘れて独自進化を続ける。通信事業者主体の垂直統合型ビジネスモデルがそれを強化する。それがアリ地獄のように、どんどん輸出競争力が失われていく。そして気がついたらiPhoneや米グーグルのAndroid(アンドロイド)にお株を奪われている・・・大抵はこうした論調であり、「だから日本のケータイ産業はダメなんだ」というように結ばれることが多い。

構造と秩序の変化が同時に起きる

 確かに、こうした議論には傾聴すべき示唆が、多く含まれている。いかなる理屈をこねようとも、残念ながら日本のケータイ産業が国際化の波に乗り遅れているのは事実だし、その間に成長していたはずの日本市場が飽和状態に陥ったため、行き場を失った事業者が撤退や経営統合による生き残りという経営判断をせざるを得なかったのが、ここ数年の動きではある。

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