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トヨタはリコールを乗り越えたか?

米国で第一線を支える男たちの物語

2010年10月21日(木)

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 今年2月、トヨタ自動車のリコール問題を巡って、米議会下院エネルギー・商業委員会では公聴会が開かれた。そこで、証言に立った米国トヨタ自動車販売社長のジェームス・レンツは、不思議な感覚に捕らわれたという。

 厳しい批判にさらされたその時、トヨタの米国人トップは何を感じたのか。

 「始まるまでは、とてつもないプレッシャーを感じましたよ。公聴会で何を言うかで、会社のその後が大きく違ってきます。いわばトヨタの命運を背負っているわけですから」

 予期せぬ急加速の原因が、電子制御系統にあったのではないか…。そんな疑問が渦巻いていた。厳しい質問が延々と繰り返される。

社員やディーラーが私を支えている

 「最初の5分は恐怖を感じました。だって、何が起きるのか見当もつかなかったから」

 ところが、5分が過ぎた頃から、レンツは急に落ち着きを取り戻したという。

 「背後にいる社員やディーラーが、私を支えていることを感じたんです。不思議な感覚でした。だって、私は後ろを振り返ったわけではありませんから。でも、確かに感じたんです。それは、アキオも同じだったと思います」

公聴会に出席したジャームス・レンツ、米国トヨタ自動車販売社長

 レンツが証言台に立った翌日、トヨタ自動車社長の豊田章男も公聴会で答えている。そして、トヨタを代表して批判にさらされた2人は、何か確信に近いものを感じ取ったという。

 それは、レンツがトヨタでの28年間で学び取ってきたこととも言える。それを再確認したのが、公聴会の席上だった。

 トップから社員まで、同じ現場に立って課題に取り組んでいく――。米国の企業文化には馴染まない経営だと思われているが、レンツは一体、誰からトヨタウェイを学び、習得したのか。そんな問いを投げかけた時、彼から意外な答えが返ってきた。

 「教えてくれた人が多すぎて語りきれないよ。だけど、トヨタウェイは私の心の底にあった価値観と一致したんだ。トヨタに来る前から持っていた価値観にね」

朝6時半に訪ねてきた販売会社社長

 レンツがトヨタに入社したのは1982年。実はそれまで、彼は米ビッグスリーの社員だった。米フォードの若手エリートとして将来を嘱望されていたという。

 「飛び抜けて早く昇進して、破格の報酬ももらっていた。でも、どこか満たされなかった」

 当時のレンツは、多くの米国人と同じ不満を抱えていたという。職場に満足できない。「だから、米国人は転職を繰り返すんだ」。

 そして彼も、27歳の時にトヨタに転職した。だが、当初は「トヨタもあまり変わらない」と思っていた。

 3年目のこと。米西海岸の都市、ポートランドの販売マネジャーになった。そして、いつも、誰より早く出社していた。

 その日も午前6時半に会社に着いていた。すると、ノックの音が聞こえる。「一体、誰がこんなに早い時間に訪ねてきたんだろう」。ドアを開けると、そこに日本人の老夫婦が立っていた。

 それが、米国トヨタ自動車販売の当時の社長、牧野功だった。

自分が求めていた価値観に気付いた

 「今、空港から来たんだけど、クルマと地図を貸してくれないか」

 そう言うと、自らハンドルを握ってディーラーを訪問して回る。現場では販売員や修理工と握手して、意見を聞こうと耳を傾ける。

 フォードには、そんな企業トップはいなかった。もし、社長がディーラーを回ろうものなら、社員が事前にディーラーをチェックして回って、どう答えるか指導するだろう。そして、社長が回るときには、一緒に十数人の社員が「付き添い」としてお供する…。

 だが、トヨタのトップは、自分一人で地図を片手に出かけていく。しかも、現場の人々と同じ目線で語り合う。

 「自分が求めていた価値観に気付いた瞬間だった」

 だから、レンツはその後も、転職する気にはまったくならなかったという。トヨタ歴は28年にも及ぶ。今では、米トヨタ自動車販売の社長に就任している。そして、四半世紀前に見た日本人社長のように、ディーラーを自分の目で見て確かめる。

 そうした販売の前線での信頼関係が、リコール後の販売の復調につながったのだろう。今年4~6月期の北米での販売台数は52万6000台で、前年同期比で35.9%も伸びている。日本よりも増加率が大きいのだ。

 その状況を確かめるため、米カリフォルニア州の自動車販売ディーラーを取材に行った。その店の名前をレンツに話すと、店の状況を詳しく知っていた。

 「ちょっと古いけどね。でも、今、投資をしているから、いい設備がこれから出来るよ」

コメント4件コメント/レビュー

昔から良くも悪くも「トヨタの社員の考え方は、金太郎飴だ。」と聴く。何事についてもメーカーから販売店の末端まで意思統一が出来ていると言うことなのだろう。それが海外までできているのはすごいことだと思う。(2010/10/28)

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「トヨタはリコールを乗り越えたか?」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

昔から良くも悪くも「トヨタの社員の考え方は、金太郎飴だ。」と聴く。何事についてもメーカーから販売店の末端まで意思統一が出来ていると言うことなのだろう。それが海外までできているのはすごいことだと思う。(2010/10/28)

Lexus等のリコールの実態の話はなかったので残念である。Ford,GMのリコールなどありふれており、今回の原因がわかったのであろうか?米国における情報戦、メディアやら弁護士の動きを解って対処しなければならない。今回はいわゆる日本的な対応で乗り切ったと思えるが、国ごとに対処は変わると思われる。日本のトヨタ品質保証部が現地の正確な情報を具体的に入手し判断をフィードバックする方法が悪かったとは思えない。判断が遅かったのかフィードバックが遅かったのか、現地だけの判断で良しとする類のものだったかの報道も期待したかったが、外の騒ぎだけが報道されたようである。報道は事件の深い解析まで期待したい(2010/10/22)

トヨタ車って、アメリカやヨーロッパでみるとカッコいいのだけど、日本ではすごく不細工。なぜ海外仕様のデザインやカラーリングが国内に活かされないのか、不思議。(2010/10/21)

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