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「世界一」になんてならないほうがいい

欧米メーカーにない「企業文化」こそトヨタの真骨頂

2010年11月12日(金)

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 2008年に販売台数で米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて世界一の座を手にしたトヨタ自動車。しかしその栄光はむしろトヨタを苦しめているように見える。

 大規模な品質・リコール(回収・無償修理)問題で、米国で吹き荒れた容赦なき批判の嵐。その背景には何があるのか。強みとされてきた品質とブランドに対する信頼を回復し、トヨタは再び競争力を取り戻すことができるのか。

 『ザ・トヨタウェイ』(日経BP社)の著者で、米国の自動車業界にも詳しいミシガン大学のジェフリー・ライカー教授に聞いた。

(聞き手は山崎良兵=日経ビジネス記者)

―― トヨタ自動車の業績は急回復していますが、今年前半は、大規模な品質・リコール(回収・無償修理)問題に苦しみました。危機はトヨタにどのような教訓を与えたのでしょうか。

 ジェフリー・ライカー 世界一の自動車メーカーになるのは、本当に恐ろしいことだ。大規模なリコール問題を経験して、トヨタの幹部はそう痛感したのではないでしょうか。

 トヨタが品質・リコール問題に対応するのに、時間がかかったのは事実です。ユーザーのクルマの使い方に対する理解や日米で情報を共有する仕組みなどに課題があった。トヨタは、こうした弱点の克服を迫られています。

 しかし米国におけるメディアの報道は、センセーショナルで誤解も多かった。例えば、トヨタ車の電子制御システムに不具合があり、「意図せぬ加速をする」という問題。「アクセルを踏んでいないのに、トヨタ車が突然急加速をした」という人がいれば、メディアは真偽も確かめずにニュースを垂れ流しました。後でそれがウソだったと判明したケースさえあります。米当局の調査の結果、最近になってトヨタ車の電子制御に問題が見つからなかったことが明らかになりました。

 トップ企業は、常に背後から狙われるものです。米ゼネラル・モーターズを抜いてナンバーワンになったからこそ、トヨタへの関心が高まり、報道も派手になった。

 ドイツのフォルクスワーゲン・グループは、世界最大の自動車メーカーを目指しています。同社がナンバーワンになることは、トヨタにとって幸せなことかもしれない。問題が起きれば、2番手よりもはるかに厳しく責任を追及されるという悩みから逃れることができるからです。

カイゼン文化は壊れていない

―― 米国ではリコール問題の影響は尾を引いています。トヨタは、品質とブランドに対する消費者の信頼を取り戻し、再び競争力を取り戻せるのでしょうか。

 時間がかかっても、トヨタは復活するでしょう。なぜならトヨタには、欧米メーカーにはないユニークな「企業文化」があるからです。

 世界にはたくさんの自動車メーカーがありますが、私はトヨタの競争力の源泉は「トヨタウェイ」にあると思っています。人間尊重と継続的なカイゼンを中核価値に掲げる企業文化です。

 トヨタは、継続的なカイゼン活動を実現する唯一のリソースは人材だと考えています。だからこそ、社員に多額の投資をする。人に投資すればするほど、社員からはたくさんの良いアイデアが生まれ、会社の様々な部分が良くなっていきます。

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「「世界一」になんてならないほうがいい」の著者

山崎 良兵

山崎 良兵(やまざき・りょうへい)

日経ビジネス記者

日経ビジネス編集部、ニューヨーク支局、日本経済新聞証券部を経て、2013年1月から日経ビジネス編集部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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