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今すぐ「あかつき2」の製造開始を

思いきった予算を付け研究者コミュニティー崩壊を防げ

2010年12月28日(火)

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 12月7日の金星探査機「あかつき」金星周回軌道投入失敗の原因が、燃料加圧系の逆止弁の閉塞であることがほぼ確定した。

 あかつきは6年後に金星近くに戻るので、再度周回軌道投入を試みるとしている。

 しかし、6年引っ張るともっとも貴重なものである、過去10年をかけて育成してきた研究者のコミュニティーが崩壊する。

 人材の継続育成ができなければ、太陽系探査を続けることはできない。今必要なのは、6年後の再投入よりも同型機「あかつき2」の迅速な製造と打ち上げであり、そのための十分な予算手当てである。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月27日、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入失敗が、燃料を加圧する高圧ヘリウム配管に入っている逆流防止のための逆止弁が、正常に動作しなかったためと発表した。

 あかつきは、6年後に金星近傍に戻る軌道に入っている。JAXAは、6年後にあかつきを再度金星周回軌道に入れる可能性を検討している。世間的にも地球帰還まで7年をかけた、小惑星探査機「はやぶさ」の例もあって、6年後のリベンジへの期待感は小さくない。

 しかし、あかつきとはやぶさでは状況が異なる。はやぶさでは、粘って運用を続ければ、小惑星からの地球帰還という世界初の偉業達成が待っていた。しかし、あかつきは粘っても、宇宙放射線による観測用機器の劣化が進む一方である。6年後にうまく金星周回軌道に投入できたとしても、成果はこの12月に金星周回軌道に投入できていた場合に比べて少なくなる。

 なによりも、6年も引っ張った場合、過去10年をかけて育成してきたあかつき関連の研究者コミュニティーが崩壊する。観測結果に基づく論文が書けなくては、研究者はキャリアを形成できないからだ。人材は散逸し、新しい世代の育成もできず、6年後に軌道投入に失敗した場合、次なる探査機の開発は至難の業となる。日本の太陽系探査にとってもっとも重要なのは人材だ。人なくして探査を継続することはできない。

 今必要なのは、迅速に同型機「あかつき2」(仮称)を開発し、打ち上げることだ。あかつき2は、遅れを最小限にして、人材育成のサイクルを回すために必要だ。人にかけるお金は惜しむべきではない。

たった一つの逆止弁の動作不良

 5月21日に打ち上げられたあかつきは、12月7日に金星に最接近し、搭載した軌道変更用エンジンを噴射して減速し、金星周回軌道に入ろうとした。しかし、噴射開始後152秒で、探査機の姿勢が大きく崩れたためにエンジンを停止。12分間の噴射を行う予定が、減速量が足りず、金星周回軌道に入れなかった。

 ロケットエンジンは燃料と推進剤を混合して燃焼させ、燃焼ガスを噴射することで推力を得る。あかつきの軌道変更用エンジンは、燃料と酸化剤を高圧ヘリウムの圧力でエンジンに押し込む仕組みだった。JAXAの事故調査によれば、高圧ヘリウムタンクから燃料に向かうヘリウムの配管に入っていた逆止弁がうまく開かず、燃料に正常な圧力が掛からなかったことが判明した。その結果、1)エンジンに供給される燃料の量が減って、2)酸化剤とのバランスが崩れ、3)異常燃焼が発生して探査機姿勢を崩す力が掛かったと推定している。

コメント8件コメント/レビュー

もっと広く惑星・小惑星探査のコミュニティを広げる、そのラインの上にあかつき2(planet-Eくらいですかね? Dは火星探査のMELOSで行くでしょうから)を据える、というのでしたら賛成です。近視的に駄目そうだからもう一度、は疑問です。研究コミュニティは研究者が自ら守り貫き、場合によっては増強する物、この視点が日本ではまるっきり欠けています。基礎研究だから無条件で守って貰える、そんな訳ありません。「仕分け」で無知な議員を徹底的に啓蒙する、その程度は最低必要な物でしかないです。 個人的にはあかつきの金星軌道再投入には楽観的だったりします。もちろん当初の様な軌道運用は厳しいかも知れませんが、搭載された観測装置、それによるサイエンスの結果は6年経った位では色あせません。衛星コミュニティも日本に拘らなければ場所はあります。要は何をどうしたいか、です(個人、組織ともども)(2011/01/06)

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「今すぐ「あかつき2」の製造開始を」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

もっと広く惑星・小惑星探査のコミュニティを広げる、そのラインの上にあかつき2(planet-Eくらいですかね? Dは火星探査のMELOSで行くでしょうから)を据える、というのでしたら賛成です。近視的に駄目そうだからもう一度、は疑問です。研究コミュニティは研究者が自ら守り貫き、場合によっては増強する物、この視点が日本ではまるっきり欠けています。基礎研究だから無条件で守って貰える、そんな訳ありません。「仕分け」で無知な議員を徹底的に啓蒙する、その程度は最低必要な物でしかないです。 個人的にはあかつきの金星軌道再投入には楽観的だったりします。もちろん当初の様な軌道運用は厳しいかも知れませんが、搭載された観測装置、それによるサイエンスの結果は6年経った位では色あせません。衛星コミュニティも日本に拘らなければ場所はあります。要は何をどうしたいか、です(個人、組織ともども)(2011/01/06)

事業仕分けの話に短絡させるコメントが多くて見苦しい。国産スパコン事業は完全に税金の無駄遣いだった。(市場価格の何十倍かの製作費を投入して世界一の性能を発揮できる保証のないアーキテクチャをこしらえようとしていた。しかもメーカーが先に離脱済みだった。)この記事の眼目は人材育成にどれだけ費用を投入できるかである。あかつき2を作ることに目的があるのではなく、それを起点として確保されている人材を維持発展させるための提言である。あかつき2は技術的に製作可能であることはすでに分かっているのだから。これは国家の持続戦略であり長期的展望につながる話だ。科学力と技術力によって立つ以外にこの国に繁栄の未来はない。必要な手当てはすべきだと思う。筆者の主張に賛成である。(2011/01/05)

あかつき以外の探査機の予定は無いのでしょうか?金星が完了してから別の惑星ですか?もし惑星探査に関する事業が(あかつきの正否に関わらず)連綿と続くのであれば、人は育っていくのでは無いですか?金星はこれっきり?の可能性はあるでしょうが、金星の気象観測が地球の温暖化を計る上で重要な意味をもおっているのであれば至急第二弾を検討するべきであるし、他国の探査衛星があかつき以降に来るのであれば相乗りさせてもらって研究を続行すれば良い。どの程度のものかは分からないが、金星研究の為の(衛星の為では無い)バックアッププランは検討されているでしょう。むしろあかつきだけに頼っていては失敗時のリスクが大きすぎる。予定通りの軌道投入に成功していたとしても観測機器が全滅になっていた...では結果は同じく失敗だ。残念ながらJAXAにはNASAほど金も人材も無いのだから宇宙先進国では無い日本で、できる範囲の事を地道にやるのが一番。また下にスパコンの事を書かれている方がいるが、ベンチマークの性能など2番目でも3番目でも良い。テストの為の一瞬の出す無意味な値だ。しかも理研の計画自体が仕分け当時は順調に完成しても世界一になれるか怪しい、金だけかかるどうしようもない代物だからだ。仕分けられて当然。ベンチマークの値だけで良ければコンピュータのユニットをドンドン追加するだけで世界一を達成できると言うのに。またJAXAの展示場などなぜ東京駅の駅前にある必要があるのか?案内も悪いし施設自体のアピールが低い。なので一見さんも少ない。施設の存在自体を知らない人が多い。仕分け報道前から何度も行っているが、必然性は感じられなかった。上野じゃだめなんですか?。こんな無駄があるから衛星への予算が少ないとは考えないのだろうか?(2011/01/05)

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