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2020年までに500万台普及を狙う政府
技術はついていくのか?

現地発(1) 自動車販売急増の中でわき起こったEVブームの実態

2011年1月12日(水)

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 1月6日、仏ルノーの幹部らにより電気自動車(EV)関連技術の流出問題が明るみになった。フランスでの報道によれば、その流出先としては中国が疑われているという。2010年には1800万台を超える販売を達成し、今や世界最大の自動車大国である中国。では、EVについてはその実力はどうなのか。中国が流出先として疑われている理由の1つには、政府の積極的な姿勢と現実の技術水準のギャップが大きいこともあるのではないだろうか。現地取材などをベースに、中国でわき起こっているEVブームの実態を見ていきたい。

 筆者は、大学院で研究した時代を含めると、15年以上にわたって中国の自動車市場を研究してきた。技術開発や新車の発表の場に立ち会うたびに、本当に中国はEV大国になり得るのか、という疑問を持ってきた。2010年11月には深センで、EVの技術の集大成を発表・展示する「世界電気自動車大会」に参加した。そこで展示されたクルマや、技術発表の中身を分析し、この疑問は強まる一方となった。

 ちょうど、このほどカナダのマニトバ大学の環境学部の教授Vaclav Smil氏の近著『Prime Movers of Globalization: The History and Impact of Diesel Engines and Gas Turbines』を読み、電気自動車は相当画期的な技術革新がなければ、2100年代になってもジェットタービンやディーゼルエンジンに代わって輸送の主流にはなれないという認識を強めた。では、自動車大国、中国はどのようにEV取り組んでいこうとしているのだろうか。

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 中国は、モータリゼーションを迎えるとともに厳しい環境対策も求められるというジレンマに立っている。本来ならば、かつてのように自転車という個人モビリティに「逆戻る」ことが、最も環境に優しい手段である。実際、欧米先進国では、わざわざマイカーを売却して自転車通勤に切り換えるというエコ派消費者が増えている。

 しかし、中国の自動車保有率は、2010年時点で20人に1台に止まっている。ほとんどの国民が、自動車の保有を経験していない状況では、自動車がもたらすモビリティの利便性や社会ステータスの著しい向上を誰もが憧れている。逆に、自動車が持つマイナスの部分を冷静に認識し、自らその保有を放棄するという動きにはまだつながっていない。

 このため、多くの国民が、エコロジーという意識を持つことはあっても、所得の上昇とともに自動車の消費を止めることは、非常に困難な状況にある。中国の若年層に関する意識調査では、最も欲しいモノのリストに、自動車が常にトップ3にランキングされている。これに対し、先進国、例えば日本の若年層を見ると、クルマは数年前からすでに欲しいモノリストのベスト10に入っていない。

 中国政府は、日米欧の先進国がこれまで経験してきたモータリゼーションをよく研究している。自動車の普及がもたらす社会的マイナスコスト、たとえば排ガス公害、渋滞問題、交通事故、モビリティの多様化によるエネルギー消費の増大について、対策を模索してきた。

 官僚側が意図的に自動車の普及によるマイナスの部分を避けようとして、EVを始めとする新エネルギー自動車へのシフトを進めようとしても、一般国民の立場から見れば、現時点では殆どの新エネルギー自動車が商品としての魅力を欠け、本格的な普及を促す起爆剤としては力不足である。

 中国にとって自動車産業は、都市開発に次ぎ経済成長を担う二番手の牽引車となっている。中国政府が商品の魅力に欠ける未熟な新エネルギー自動車を強引に普及させようとすると、逆にこの主要産業となった自動車産業の失速を招く懸念すらある。

 このように、政府がインセンティブの支給など新エネルギー自動車の育成に注力する一方、産業の実質的成長を担うのは、従来の内燃機関、つまり19世紀で開発されたガソリンエンジンを搭載する乗用車である。このギャップをいかに解消するかが、21世紀の中国におけるモータリゼーションの方向性を決め付ける重要な要素になると考えられる。

政府は民族系メーカーの統合再編狙う

 中国政府は、ボタンかけの順番が間違わないように、目下は民族系メーカーのプレゼンス拡大と、将来のエネルギー需給バランスを崩さないようにエコ技術を持つ民族系メーカーによる統合再編を狙っている。中国政府は、2008年からエコカー技術に財政支援を実施し、2010年からはEVに傾斜するようなインセンティブを支給するなど、長期的に産業の持続的成長を可能にする成長路線を模索し始めている。

 これまで欧米日自動車先進国では、次世代エネルギーへの進化について、ガソリンエンジン→クリーンガソリンエンジン→ハイブリッド自動車(HV)→プラグインハイブリッド自動車(PHEV)→EV→燃料電池自動車(FCV)という、いわゆる技術進化のロードマップがあった。しかし、中国が2015年を達成年度とする「第12次五ヵ年計画」においては、EVつまり電気自動車に傾斜するような優遇策を決定。世界最大の自動車市場を持つ中国が、ハイブリッドカーを飛び越えて直接EV時代に突入しようとすれば、これまで業界の常識を破るような製品開発が進む可能性も十分考えられる。

 とはいえ、2010年現在、EVのコアとなる高性能・高耐久性の駆動用電池はまだ世界的にも実用化されていない。しばらくの間は、ガソリンエンジンの低公害化技術が、モビリティとエコ対策を両立させるための妥協案であり続ける。

中国、基本要素展望(2010/2020/2030年)

  2010年 2020年 2030年
人口規模(都市人口比率) 14億人弱(45%) 14億人超(53%) 15億人超(61%)
所得水準
(2010年米ドル価値相当)
3500ドル 8000ドル 1万5000ドル
自動車保有規模(自動車保有率) 7500万台
5%(20人に1台)
2億台
15%(7人に1台)
5億台
30%(3人に1台)
石油消費
(うち自動車燃料向け石油消費)
4.5億トン
(1.38億トン)
7.5億トン
(2.56億トン)
11億トン
(4.2億トン)
CO2排出 75億トン 126億トン 200億トン

(出所:FOURIN)

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