• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「ヒトがゲーテの詩に感動するのは、彼が生命をじっと見ていたからなんです」

  • 秋元 志保

バックナンバー

2011年1月17日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 2008年10月、東京大学は世界に通用する次世代のビジネスリーダーを育成するプログラム「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)」を開講した。東大が持つ最先端の豊かな知的資産を活用したプログラムで、“日本を背負うビジネスリーダーの輩出”を目指している。

 マネジメントやコミュニケーションを学ぶ時間もあるが、「教養・智慧」が全体の約70~80%を占め、その内容は多岐にわたる。

 講師の浅島誠教授は、細胞の分化を誘導するたんぱく質「アクチビン」を発見し、イモリやカエルを使った研究から再生医療の道を切り開いた発生生物学の科学者。現在ではヒトのiPS(人工多能性幹)細胞を使った再生医療の発展に貢献しているが、長年生命の謎に取り組んできた教授が考える「教養・智慧」はどのようなものなのか、お話しをうかがった。

東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)
 40歳代の企業人や行政官の幹部候補生などを対象に、東京大学が持つさまざまな分野における最先端の知識を活用し、深い教養や智慧と実践的で柔軟な実行力を併せ持つ、高い総合能力を備えた人材を育成するプログラム。
 受講期間は6カ月、費用は600万円、定員25名。毎週金曜日と土曜日の終日行われる。プログラムは「教養・智慧」「マネジメント知識」、「コミュニケーション技能」で構成され、全プログラムの約70~80%を「教養・智慧」が占める。
 2008年10月に第1期開講。2011年4月には第6期が開講される。

人間だけを中心に物事を考えてはいけない

浅島:「生命とは何か」、「人間の尊厳とは何か」。私は「卵からどうして親になるのか」という生命科学(発生生物学)を研究していますが、このような研究しているとそんな質問をよく投げかけられ、自分の生命観や科学観を語らなければいけない場面が出てきます。

 答えの中には必ず私自身の生命に対する考えが入ってきますし、議論をすることもありますが、実はこの自分自身の考えを交え議論していくことはとても重要なことなんです。

 例えば、これまでの生命倫理では、心臓停止をもって死とすると定義されてきましたが、最近では脳死をもって死とするに変わってきています。

 脳死が本当の死であるかを考えると、一般的な個人の尊厳から見れば脳死は死になります。ですが、心臓が停止しているかと言うと動いている場合が多いわけです。そうすると「どこで生死を切り分けるか」という問題が議論されます。

 議論を繰り広げるためには専門的な知識はもちろんですが、日本社会の現状や教育、さまざまな国の文化や歴史や環境といった幅広い教養が必要になってきます。

 最終的にある程度の合意を得るためには、第三者を入れて検証することも必要になってきますが、こうした議論を繰り返していると、これまでとは違った新しい見方や考え方が出てくるわけです。

浅島 誠(あさしま・まこと)

東京大学名誉教授
産業技術総合研究所フェロー、幹細胞工学研究センター長
昭和42年 東京教育大学理学部卒業。昭和47年 東京大学理学系大学院博士課程修了(理学博士)

専門は発生生物学。「卵から幼生への形づくり」について実験形態学から分子生物学まで行っており、器官形成の発生生物学や細胞の増殖と分化の分子生物学的研究を行っている。生物の分子発生プログラムと各器官形成に興味を持ち、1999年に分化誘導物質であるアクチビンを世界で初めて同定し世界的評価を得た。主な著書に『発生とその仕組み』(共著、出光書店)、『発生のしくみがみえてきた』(岩波書店)、『分子発生生物学』(裳華房)『新しい発生生物学』(講談社)など他多数。 2008年度の文化功労者に選ばれた。紫綬褒章受賞。日本学士院賞・恩賜賞受賞

NBO:例えば、多様性というかサスティナブルに営んでいく世界を作ろうといったとき、自分の専門分野だけでなく、幅広い知識が必要になってくるんですね。

浅島:そうなんです。最近はグローバル化という言葉をよく耳にするように、自分の専門分野だけを見ていたのでは通用しない時代になっています。「自分で考えて判断し答えを出していく」ためには、政治や教育、国際的な意見も考慮できる総合的な力が必要になります。

これは生命科学に限った話しではないと思いますが、幅広い知識や深い教養がなければ、議論を展開していくことも説明責任を果たすこともできないのです。

 特に、人間は人間を中心に物事を考えがちですが、人間の世界がこの世のすべてではありません。他の生物とどうやって共存していくのか、違った文化をどう許容し受け入れていくのかなど、物事は広く総合的に考えていかなければなりません。

 ですから、私たちの研究分野は専門的な知識だけでなく幅広い教養も身に付ける総合学問だと言えるでしょう。

NBO:生命科学は総合学であると。確かに「人間の世界だけがすべてではない、他の生物とどうやって共存していくのか」という目線で物事を考えるには、幅広い教養や知識が必要になりますね。

ヒトは100万年、イモリは3億年。生きてる歴史の長さが違います

浅島:生命誕生が約34億年とするならば、人間の歴史はたった100万年にも満たないんです。一方で私が専門に研究しているイモリやカエルは氷河期を乗り越え3億年以上の歴史があります。人間は体温が4度上がればうなって寝込んでしまうし、4度下がれば意識を失ってしまいますが、イモリやカエルはピンピンしています。生命力を見てもイモリやカエルのほうがはるかに強く、遺伝子の数も人間より多いんです。

 人間の歴史も浅く、とても限られた環境範囲で繁栄してきた生物なんです。ですから、人間だけのことを考えて議論するのではなく、他の生物との共存やさまざまな文化をどうやって許容して受け入れていくのか、幅広い教養を持って議論することが大事だと思います。それが教養を求める根源です。

NBO:情報網も発達して、私たちの生活はとても豊かになっていますが、これからも発展してくためには、いち生物として他の生物や地球環境とどう混合して生きていくのかを考えなければいけないと。

コメント0

「知の最前線」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

富士山を目標にする人はいつか富士山には登れるでしょうが、エベレストには登れない。

澤田 秀雄 エイチ・アイ・エス会長兼社長、ハウステンボス社長