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デザインがダメなら、カイゼンしてもダメ

「ひたすら頑張る毎日の活動」から突破口は見いだせるのか

  • 谷島 宣之

バックナンバー

2011年1月19日(水)

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 「ありきたりの設計を製造段階で改善しようとしてもどだい無理」。

 これはファナックの稲葉清右衛門名誉会長の発言で、1月12日付日本経済新聞1面の『ファナックの国産宣言』という記事に出ていた。製造業のみならず、日本全体にとって重要な言葉と思ったので、改めて引用した。

 ファナックは「市場の変化や顧客の要望」を重視し、まず価格を決める。研究者は、その価格で利益が出るように考えて、製品を設計する。つまり、「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」。「価格、開発期間、仕様」という「様々なハードル」を越える研究者の力がファナックを支えている、といった記事であった。

 自社を起点にするのではなく、市場や顧客を起点にして製品やサービスを組み立てるべし、とは従前より言われていることだが、なかなか記事に書かれていたファナックのように実践できるものではない。

 ところで、記事には「すべてを決める研究開発」という大きな見出しが付いていた。これを「すべてを決めるデザイン(設計)」と読み替えれば、あらゆる企業や組織に当てはまる指摘になる。「ありきたりのデザインを後工程で改善しようとしてもどだい無理」ということだ。

 デザインの対象はモノとは限らない。サービスや制度の場合もある。何らかのプロジェクトをデザインすることもある。本欄のテーマである情報活用を成功させるには、システムのデザインがカギを握る。

 新規事業や新会社のデザインも、さらには国家や社会や地球のデザインも重要である。「ありきたりのマニフェストを後で改善しようとしてもどだい無理」である。

電車とメールの告知からデザインを考える

 ファナックの記事を読んだ後、電車に乗ったところ、「木を見て森“も”見るシステム思考」と書かれた広告が目に入った。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の学生募集である。同研究科は、マネジメント力、創造力(デザイン)、コミュニケーション力を身に付けさせるという。

 なるほどと思ったのは、「木を見て森“も”見る」という表現である。目の前にある製品という「木」だけを見てデザインしようとしてもダメで、市場や顧客の利用現場という「森」まで見なければならない。

 あるいは、こうとも読める。デザインという「木」は大事だが、実際の製造やサービス部門、間接部門という「森」があってこそ、顧客に価値を提供できる。冒頭の記事の「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」や「すべてを決めるデザイン」という下りは少々書き過ぎで、正確には「利益は開発時点でほぼ決まり、製造段階だけでは生まれない」「ほぼすべてを決めるデザイン」となるだろう。

 デザインが大事と言おうとするあまり後工程を軽んじてはならないし、製造やサービス現場の改善活動を強調するあまりデザインを軽んじてはならない。だが、往々にして、木だけを見たり、森だけを見てしまう。

 記事を書いていると、どちらか一方を強調してしまいがちであり、といって正確に書こうとすればするほど、かえって歯切れが悪くなる。この点にしばしば苦労するのだが、「木を見て森“も”見る」は、全体を俯瞰し、なおかつ細部に気を配る、ということをうまく表現していた。

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