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「思い切りやれ」、現場を奮い立たせた一言

真藤恒の技術経営を学ぶ[その3]

2011年4月18日(月)

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 人のやる気を引き出し、古い体質を変え、新しい事をやり遂げる。日本に今求められている事であり、NTTの社長・会長を務めた真藤恒氏が生涯取り組んだ事でもある。著書『歩み』(NTT出版、1989年)に収められた語録から、同氏の考えと姿勢を学ぶ。講師は真藤氏から直接指導を受けた石井孝氏(元NTT常務)である。

(『その1:事務屋、技術屋ではなく社会人たれ』から読む)
(『その2:勇気なきインテリは「熟慮不断行」』から読む)

◇   ◇   ◇

【エラーを恐れずトライせよ】

 誰でも背任行為をしたとき厳罰を受けるのは当然のことである。それでは何か仕事をして失敗したらどうか。減点主義で臨むか。漫然と仕事をして失敗すれば、怠慢の罪に当たるだろうが、何かに積極的に取り組んでいる時の失敗を、どう考えるかである。

 私はいくつもの失敗を重ねてきた。経験のないことをやれば、うまくいかないのは当たり前だ。欠陥が出る。それを改良する。また別の欠陥が出る。

 トライアル・アンド・エラーの連続である。エラーは出るものなのだ。むしろエラーを恐れてトライしないことが責められねばならない。

 ここで注意すべきことはトライした後で、エラーを見つけ出す能力が、その人に備わっているかどうかである。自分を客観視する能力がいる。高く広い判断力を身につけることが大切だ。

―― おっしゃる通りと思いますが、経営トップであればだれでも、入社式などで言いそうです。

 石井 文章だけ見ると、そう受け取られるかもしれません。しかし、私は真藤さんから実際にこう言われました。読み返すたびに、「エラーを恐れずトライせよ」と叱咤される思いがします。

 「商売道具の電子交換機を自分達で直せないとは何事か」という真藤さんの強権発動で、交換機用ソフトウエアをNTTの中で開発するプロジェクトが始まり、私がリーダーに任命され、第1弾として、NTTと同時に生まれた新電電会社とNTTの市内網を接続するゲートウエイ機能のソフトを内製した経緯はお話しました(『その1:事務屋、技術屋ではなく社会人たれ』、『その2:勇気なきインテリは「熟慮不断行」』)。

 電子交換機ソフト全体ではなく、接続機能に的を絞り、開発作業を何とか軌道に乗せることができ、新電電会社のサービス開始に間に合わせるべく奮闘していた時、非常に困った事態になりました。

 サービス開始の目前になって、設計上の考慮漏れが発見され、設計からソフトの開発、テストまで、やり直すことになったのです。これを「手戻り」と呼びますが、素人集団の悲しさで、相当大幅な手戻りになることが分かりました。

「任せるから思い切りやれ」

 世間に公表されている新電電会社のサービス開始日に間に合わないかもしれない。そのような事態になれば、間違いなく「NTTは新電電の営業を妨害している」と非難の嵐になります。また、ようやくNTT社内で「どうせ駄目だと思っていたが内製チームは案外やるようだ」と言われ出したのに、「やっぱりな」となってしまう。

 困り果てて、真藤社長に状況を説明に行きました。

 「このままですと間に合いません」。

 「構わん。任せるから思い切りやれ、外野のことなど気にするな」。

 即答でした。怒りもしなければ質問もしない。といって、じっと考えてからおもむろにこう言ったわけでもないのです。本当に、こともなげでした。

―― その瞬間、どう思われましたか。

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「「思い切りやれ」、現場を奮い立たせた一言」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者、2009年1月から編集長。2013年から現職。プロジェクトマネジメント学会員、ドラッカー学会員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト