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命を預かる技術で最も大事なことは何か?

福島第1原発のフェールセーフ機能は不十分だった

  • 宮田 秀明

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2011年5月20日(金)

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 原発事故は「科学」の問題ではなく「技術」の問題である。私はずっと技術者だ。科学と技術の違いは大きい。中でもいちばん大きいことは「技術は人間に対して責任を持つ」ということだ。だから、人間に対して責任を持つ義務の少ない科学者と責任を持つことを義務づけられている技術者との差異は大きい。大学の中でも、理学と工学の間の意識の差というか壁は、ほとんどの分野で高い。お互いに本音で語り合えることは意外と少ない。

 技術の世界に「フェールセーフ設計」という言葉がある。失敗したり故障したりしても安全が保たれるように設計するという意味だ。技術のアウトプットであるすべての製品、特に人命にかかわる製品の設計ではこれが大切である。

 人が乗る輸送機器ではこのことが特に強調される。

 新幹線は何度も大きな地震に遭遇したが、人を傷つけたことはない。緊急停止システムというフェールセーフ機能を装備しており、それが正しく機能しているからだ。

 飛行機は空中を飛行しているので緊急停止できない。停止したら墜落するので、制御系統を3重にして、必ず安全に飛行できるようにしている。さらに、3系統のうち一つにでも異常があると、運航を中止してしまう。

フェールセーフ性能を確認するため3年にわたって実証実験

 私も輸送機器の技術者だ。10数年前に水中翼船を開発した時、最初から最後まで最も努力を集中したのはフェールセーフ性能だった。システムとしての性能や経済性は早い段階で満足できるレベルに達することができたが、安全性の確保に時間がかかった。安全性に問題があっては製品にすることはできない。

 3年間にわたって、プロトタイプの実験船による実船実験を尾道で行った。その目的の50%以上は、この新開発の高速船のフェールセーフ機能の向上と確認だった。安全性に関する性能を、計算やコンピューターシミュレーション、模型実験で知ることには限界がある。だから長さ12メートルの実験船を建造して、3年間、実際の海で走らせた。

 私の開発した水中翼船の商品としての競争相手は、米国海軍が開発し、ボーイング社が民間転用した「ジェットフォイル」と呼ばれる水中翼船だった。一般的に軍用に開発されたものは、性能は良くても高価なことが多い。ジェットフォイルもそうだった。価格が高い上に、システムとしての脆弱性があった。高波で転覆する事故も起こしていた。数年前には日本で運用されているジェットフォイルが流木や鯨に衝突し、多数の死傷者を出す事故を起こしている。

 私たちのビジョン――安価、つまり経済性に優れて、かつフェールセーフな水中翼船を開発する――を実現するために、尾道を基地にした瀬戸内海中部海域での実船実験は欠かせなかった。ほとんどあらゆるテストを行った。大きな波の中で動揺性能を試したり、補助翼を使って強制的に揺らしたり、水中の翼を空中に露出させて失速させたりした。

命を預かる技術とそうでない技術の間には壁がある

 人命を預かるのは輸送機器の世界だけではない。製薬の世界も似ている。いずれも人命を預かる商品の開発だからだ。何百億円の資金をかけた新薬開発プロジェクトが、開発の終盤になって、ある確率以上で発生する副作用の可能性が発見されて、開発が失敗に終わる。こんなことも多いと聞く。

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