• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

仙谷副長官「やってくれ!」が一転…

JCO臨界事故で助けられなかった無念、再びの悪夢か

2011年7月19日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(前々回『原発作業員「幹細胞採取」なぜ実施されない』から読む)
(前回『万能「血液の種」を確保せよ』から読む)

 福島第一原発の原子力災害の現場で作業を続けている方たちが、大量に被曝することは「絶対にありえない」とは言い切れない。福島第一原発では、国も電力会社も「絶対にありえない」と言い続けてきたチェルノブイリ原発事故並みの重大事故が起こったのである。

 今、大事なことは、これから10年以上にわたり危険な作業を続けねばならない方たちが、大量に被曝しても命が救える可能性のある備えをすることだ。虎の門病院の谷口修一さん(血液内科部長)のチームは、そのために「自己造血幹細胞」の事前採取をするよう、必死に訴え続けている。

画像のクリックで拡大表示

 大量被曝すれば救命治療は緊急を要する。

 放射線感受性の高い血液細胞が致命的なダメージを受けるため、血液細胞の回復のため、あらゆる血液細胞の基である「造血幹細胞」を移植する必要がある。

 大量被曝事故では、骨髄バンクからHLA型(白血球の型)が合うドナーを探し、骨髄液を提供してもらう「同種幹細胞移植」を行う余裕はない。そこで緊急時の「造血幹細胞」の移植では、まず兄弟のHLA検査を行い、タイプが合わない場合は臍帯血バンクから臍帯血の提供を受けて移植する。出産時のへその緒の血液には造血幹細胞が多く含まれており、HLA型が一部合わなくても移植できる。

 しかし、あらかじめ自分自身の造血幹細胞を冷凍保存してあれば、時間がかかる手順を踏む必要はない。谷口チームは、原発作業員はあらかじめその保存をしておき、万一の事故の際に、体内に戻す備えをしおくべきだと訴えているのである。自分の造血幹細胞なら免疫抑制剤を使う必要もないため、免疫反応による重い影響も心配しないで済み、放射線でダメージを受けた白血球は2週間以内に回復する。

 事前採取する造血幹細胞(CD34陽性細胞)の数は体重1kgあたり100万個。東京大学医科学研究所f附属病院の湯地晃一郎さんによれば、それはちょっと色がついた血漿成分とともにグリコの『パピコ』のような樹脂パック数個分ほどの量という。これをマイナス196℃の液体窒素中に置けば半永久的に保存ができる。

移植した細胞が体を攻撃してしまう

 虎の門病院の谷口さんは、福島第一原発の作業員が事前に自己造血幹細胞の採取をしておくべきと訴えている心情をこう語っている。

 「福島第一原発の最前線で働いている方たちは、普通なら怖くて入れない現場で、困難な仕事に取り組んでおられるわけです。私たちは、東海村JCO臨界事故で大量被曝をした作業員の方を助けられなかったという痛い経験をしています」

 「その治療は壮絶な日々の連続でした。日々悪化していく症状が、放射線によるものなかのか、免疫抑制剤によるものか分からない中で治療を続けなければならなかったんです」

 いかつい顔をした谷口さんだが、語る言葉の一つひとつには、原発で作業に取り組む作業員たちへの感謝の思い、そして何として命だけは守ってあげなくてはという人類愛とでも表現したくなる心温かさを感じる。

 臓器移植で起こる拒絶反応は体の側が移植臓器を追い出そうと反応するが、造血幹細胞の場合は逆で、外部から入れた細胞が体の側を攻撃する免疫反応を起こしてしまう。これを、「GVHD(移植片対宿主病)」と呼ぶ。そのため免疫抑制剤を使い続けねばならないが、その副作用で皮膚は真っ赤になり、腸管出血や下痢が続き、それが命を脅かす。免疫抑制剤を必要とする治療は、厳しいさじ加減が求められる。

 「JCO臨界事故の被曝患者さんの1人は、このGVHDの所見が腸管にあったと聞いています。3月19日、福島第一原発での命がけの放水作業を行いに帰京した東京消防庁のハイパーレスキュー隊の隊長さんが、テレビの会見で涙ながらに語っているのを見て、『これはいかん、現場作業員を丸腰で行かせてはいかん』と感じたんです」(谷口さん)

 谷口さんの胸の内では、JCO臨界事故と福島第一原発が重なった。

コメント38

「山根一眞のポスト3・11 日本の力」のバックナンバー

一覧

「仙谷副長官「やってくれ!」が一転…」の著者

山根 一眞

山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家

ノンフィクション作家として先端科学技術分野の熱い人間像を描き続ける一方、3.11被災地支援活動も人生の大きな柱です。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長