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GXロケットの屍から「希望の芽」

IHIの新LNGエンジンは新たな需要を創出できるか

2011年8月22日(月)

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 開発中止となったGXロケットで手痛い損失を出したIHIが、新たに自社開発で液化天然ガス(LNG)を燃料に使用する10トン重(tf)級のエンジンの開発に乗り出している。

 設計は徹底的に手堅く、なおかつGXロケット用のLNGエンジン「LE-8」よりもはるかに高い性能を目指す。世界的に見ても宇宙観光用「弾道飛行機」をはじめとした需要も見込める。課題は、民が出したやる気を削がないような、ひも付きでないサポートを国ができるかだ。

 IHIが、メタンを主成分とするLNG燃料を使う新型ロケットエンジンの自社開発を始めた。推力は100キロニュートン(kN、1kN=約0.1tf)級でH-IIAロケット第2段LE-5Bエンジン(推力137.2kN=約14tf)とほぼ同クラスだ。

 同社は、2009年に開発中止となった官民共同プロジェクト「GXロケット」の第2段用LNGエンジン「LE-8」を担当していた。LE-8は迷走するプロジェクトの中で何度も設計変更が加えられた結果、合理的とはほど遠い無駄の塊のようなエンジンになってしまった。

 しかし新エンジンは違う。

 ここに写真を2枚並べる。左がGX用に開発したLE-8エンジン、右が新エンジン(まだ型式名はない)だ。

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 一見してLE-8エンジンの燃焼室が、福助の頭のように大きいことが見て取れるだろう。これはエンジンの性能を決める大きな要素である燃焼室圧力が1.2MPa(12気圧)と極端に低いためだ。

「簡素なエンジン」方針が裏目に

 ロケットエンジンの性能は「比推力」という指標で比較できる。単位は「秒」で、数値が高いほど、性能が良い。同一の推進剤で比推力を上げるためには燃焼室圧力を上げる必要がある。高圧の燃焼室に燃料と酸化剤を押し込むためには高圧を発生するターボポンプが必要になる。

 LE-8は「簡素なエンジン」が設計の基本方針だった。このため、ターボポンプを使わずに高圧ヘリウムガスの圧力を推進剤タンクにかけて燃料と酸化剤を燃焼室に押し込む方式を採用した。いわゆる「ガス押し方式」である。燃焼室圧力は低くなり、その結果、燃焼室はぐっと大きくなる。その分の重量増加はターボポンプを省いたことで補えるはずだった。

 エンジンの運転中、燃焼室からノズルにかけては高温にさらされるために冷却する必要がある。通常は燃料を燃焼室壁面内に作り込んだ流路に流して冷却するが、細い流路に十分な流量で燃料を流すためにはターボポンプが生み出す高い圧力が必要だ。LE-8は、燃焼室内の壁面の高熱を吸収しつつ気化していく「アブレーター」という素材で覆う設計を採用した。

 低い燃料室圧力もアブレーターの使用も、エンジン性能を下げる。そこで推進剤と高圧ヘリウムガスのタンクを軽量で強度の高い炭素複合材製にして、2段全体の設計で打ち上げ能力の低下を防ぐことにした。また、タンクから直接液体のLNGと液体酸素を燃焼室に供給するので、燃焼室に推進剤を吹き込む噴射器は、液滴同士を混合できる「衝突型」という形式を採用した。

 これらすべてがLE-8の開発では裏目に出た。

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「GXロケットの屍から「希望の芽」」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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