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垂直統合モデルで失敗し、垂直統合モデルで成功したジョブズのアップル

追悼編:経営学へのジョブズの貢献

2011年10月7日(金)

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 1990年、私はMacintosh Classicを愛用していた。そして、その後も新機種が出ると買い換えていった。その私が、2000年には、Windowsマシンを使っていた。そして、今、私の横にはiPhoneとiPadがある。

 スティーブ・ジョブズが生んだアップルは、垂直統合モデルで成功し、それがゆえに失敗し、そして今、再度成功している会社である。

 アップルの最初のヒット製品であるApple II(1977年発売)は、本体に、ディスプレー、データ記録用カセットレコーダーを内蔵し、キーボードが一体化したマシンだった。90年に私が使っていたMacintosh Classicも、一体型のマシンだった。当然ながら、OS(オペレーティングシステム)は、プリインストール(最初から搭載)されていた。
 当時のMacintoshの強さは、圧倒的な使いやすさであった。直観的な画面操作、おしゃれなデザインは、アップルの垂直統合モデルの成果であった。ここで言う垂直統合モデルとは、ハードとソフト(OS)を一体型で提供する製品モデルのことである。さらに、アップルは、このモデルを自社1社で提供することにこだわっていた。そして、これが、当時のアップルの成功の源泉であった。独自な模倣障壁(他社が模倣困難な資源の保有)が、アップルの競争優位をつくっていたのである。

製品ラインアップで劣った1社独占提供

 しかし、このことがアップルの事業基盤を崩していくことになる。1社独占提供は、製品ラインアップ(多様性)の面では劣る。マイクロソフトが提供するWindowsをOSとするパソコンは、多くのハード会社が参入することで、デザインや機能や価格で少しずつ異なる多様な製品を生むことになった。また、ハード会社同士の競争は価格でのWindowsマシンの優位を生んでいくことになる。
 もともとIBMによるMS-DOSの採用で企業ユースにおいて優位にあったマイクロソフトは、上記のメカニズムによって、MS-DOSの後継OSであるWindows(90年にWindows 3.0発売、95年にWindows 95発売)でその優位性を確固にした。そして、アップルの市場を奪い、やがてパソコンOSの90%以上を占めるようになっていく。このシェアの大きな格差は、両社の製品の機能的優劣をけっして反映したものではなかった。アップルが経営危機に陥った93年~96年の時代のMacintoshは、その使いやすさでは、なおWindowsを上回っていたとさえ思える。

 Windowsによる独占の決め手になったのは、ネットワーク効果(使う人が増えれば増えるほど、利用者にとって便利になる)であった。パソコンの普及とともに、他の人がどのマシンを使っているかが重要になっていったのである。他人は、使い方を教えてくれる人であると同時に、ファイルを交換する相手でもあった。この場合、他人と同じOSとアプリケーションソフトを使うことが、価値となる。
 一度シェア格差が生じると、そのシェア格差は一気に拡大していくことになった。そして、シェアの高いOSには、より多くのアプリケーションソフトが提供され、部品や周辺機器も量産効果と競争によって価格が引き下げられていく。シェアがシェアを呼ぶ「ポジティブフィードバック」が、Windowsの独占状態を作っていくことになった。

 経営学の教科書は、Windowsの成功をもって、ネットワーク効果のある製品について、ハードを提供せずソフトウェアだけに事業範囲を限定するマイクロソフト型の「水平分業」モデル、そして規格を自社のハードだけで独占しない「オープン」モデルの競争上の優位を当然視することになった(95年にアップルは、モトローラ、パイオニア、バンダイなどへのMac OSのライセンス提供に踏み切るが、この部分的オープン化戦略は、中途半端かつ遅すぎたと評された)。

 

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「垂直統合モデルで失敗し、垂直統合モデルで成功したジョブズのアップル」の著者

根来 龍之

根来 龍之(ねごろ・たつゆき)

早稲田大学ビジネススクール教授

早稲田大学ビジネススクールのディレクター(統括責任者)と早稲田大学IT戦略研究所所長を兼務。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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