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日本の技術経営力に陰りが見える

研究だけでは不十分、実証・普及が大事

  • 宮田 秀明

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2011年10月28日(金)

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 日本にとっても、それぞれの企業にとっても技術開発はいちばん大切なことだ。ところが、その技術開発力が全体的に低下してきているように感じる。最大の原因は技術経営力の低下かもしれない。

 研究開発は次の4つの段階を進めなくてはならない。研究(Research)・開発(Development)・実証(Demonstration)・普及(Dissemination)である。

 この4つの段階のそれぞれにおいても技術経営が必要だ。例えば最初の「研究」では、研究テーマの設定から始めて、数理モデルのアイデア作り、実験の計画・解析など発見と創造のプロセスへと進め、最後はそれらをまとめて成果としなければならない。これは一種の経営なので、経営力のない研究者は創造力のない研究を行なってしまう。先行する研究者を追いかけるだけ、もしくは、真似に近い研究になってしまうことも少なくない。学会や学術誌で発表される研究成果のうち95%以上はそんなものだと言っても言い過ぎではないだろう。本当に創造的な研究を行うのはたいへん難しいことだ。その大きな理由として、研究を経営することが難しいことが挙げられる。

 研究・開発・実証・普及のそれぞれの段階の経営も難しいのだが、この4段階を一貫して経営することはもっと難しい。

 研究をして論文を書いただけではほとんど何の意味もない。具体的なモデルとして開発し、その有効性を実証し、実際に社会普及させるのが工学つまり技術経営の役目である。理学の世界とは根本的な違いがある。

研究より実証、実証より普及が難しい

 私は大学で過ごした35年間、ほとんどすべてのテーマにおいて研究して論文を書くだけで終わらせなかった。必ず4つの段階を実践して、最終的に社会に役立ちたいと思ってきた。

 高速船開発では研究と開発を大学で行い、広島県尾道市をベースとして実証実験を3年にわたって繰り返した。そして民間企業と連携して商品として普及させる段階へと進めていった。大学での研究と開発における苦労はそれほどのことはなかった。しかし、瀬戸内海の中部海域を舞台とした実証実験ではたくさんの難題に直面した。予想外の技術的難題がたくさん現れた。

 体力も要求された。東京と尾道を日帰りで往復したこともある。「ひかり」が停車しない尾道は広島より遠かった。苦労を共有してくれる仲間のため、別のプロジェクトの飲み会を神戸で終えてから尾道での飲み会に移動した日もあった。

 普及段階もスムーズに行かなかった。高速船は全く新しい商品だから、まず1隻建造してから量産に入るべきなのに、受注した7隻を連続建造することがいきなり決められてしまった。コストを下げるためだった。

 第1船を造り試運転したところ、船が不安定な挙動をした。部分的な設計変更で事無きを得たものの、その時携わったすべての人が経験した痛い気持、開発責任者である私が背負った重い責任は忘れることができない。

 4つの段階は後段になるほど難しくなる。後段になるほど責任とリスクが高くなる。しかしこの4つの段階を短い時間軸上で進めていかなければ国際競争に勝てない。4つの段階を短い時間軸で進めるのが「技術経営」の真髄である。

 技術経営力を獲得することは難しい。だが、責任とリスクのある技術開発をたくさん経験して、このような力を持つ人を増やさなければならない。

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