「宮田秀明の「経営の設計学」」

日本のマネジメント力を世界が注視している

雇用の創出を伴わない土木建設だけの震災復興は許されない

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2011年11月18日(金)

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 2010年の後半のことだ。「PM/CM手法活用の促進に関する研究会」の委員長を務めた。PMはプロジェクトマネジメント、CMは建設マネジメントの意味だ。国土交通省の補助事業で、簡単に言えば、建設プロジェクトを発注者の側に立ってマネジメントする仕組みづくりの大切さを啓蒙し、普及させることを目的とした委員会だった。私は、建設関係は門外漢だから委員長になるのを固辞した。だが、私への殺し文句が来た。これまで何度も頂いてきたものだ。

 「先生しかいません」

 毎月1回の会合を通して、研究会は順調に目標へと進んでいった。委員の中には早稲田大学建築科の曽田五月也先生もいらしたし、委員の多くが民間企業の優秀な経営者の方々だったことも大きかった。

 こんな乱暴なことを言うときっと皆様に叱られるだろう。だが、この時、「ひょっとすると、売上高が数百億円の企業の社長さんの方が、数兆円の売り上げの企業の社長さんより経営者として優れているのではないか」と思ってしまった。委員会後の食事会も楽しかった。私にとってはほとんど初対面の方々ばかりだったのに、話が弾んだ。

発注者の満足度を高めるプロジェクト管理

 こうしてまとめた普及のためのガイドブックの表紙にはこう書かれている。

 「建設プロジェクト最適化のためのマネジメントサービス」「建設プロジェクトの発注方式は従来型の一括請負による責任施工方式だけではありません。PM/CM方式に基づくサービスを活用すれば、コストダウン、品質確保、プロセスの透明性、更にはプロジェクト全体の最適化など、発注者が望む多くのことが実現できます」

 日本でよく使われるゼネコンの一括請負方式は、先進国では一般的ではないし、様々な問題を抱えている。何よりも発注者の意向が十分に反映されなかったり、コスト管理がずさんだったりするのがいけない。不透明性が高いのだ。

 PM/CMには色々なやり方がある。その中で、建設プロジェクトの発生段階における発注者へのコンサルテーションから始まって、建設の実施設計や施工の業者選定、完工までのすべてを発注者と協力して管理する方法が多い。

 この新しい方式を採用する効果は大変大きい。一言で言えば発注者である顧客の満足度が高い。もちろんこの建設マネジメントサービスを提供する企業が、実施設計や施工する企業とは別の独立したものであることが必要条件である。

最大の建設プロジェクトは東北復興

 現在の日本における最大の建設プロジェクトは東北復興関連のものだ。私が心配するのは、魅力の乏しい都市を造ってしまったり、雇用の創出を伴わない土木建設だけの計画を実行してしまったり、単なる復旧の域を出ないことをしてしまったりすることだ。発注者つまり国や地方自治体の側に立って立案を助けたり、マネジメントを助けたりするコンサルティング企業がまだ十分に育っていない。従来方式の発注を行ってしまうと、こんな結果に終わりかねない。

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著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

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