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権限争いの狭間に落ちた、はやぶさ2

経済産業省と文部科学省の泥仕合、復活した官僚支配

2011年12月14日(水)

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 前回『あの「はやぶさ」後継機、存亡の危機』でお伝えした、小惑星探査機「はやぶさ2」が政府・与党会議による予算の大幅圧縮により、計画実質中止の瀬戸際にある件についての続報である。背景に、宇宙分野の権限を巡る経済産業省と文部科学省の暗闘があることが見えてきた。

 はやぶさ2が権限掌握の邪魔になると見た経済産業省が与党・民主党への働きかけを強めた結果が、はやぶさ2の大幅予算圧縮という政治の意志になった。政治も霞が関もはやぶさの科学的成果は日本という国にもたらした影響を顧慮することなく、日本の未来を真剣に考えないという不幸な情況の中で、官僚の“ご説明”の通りに政治家が動くという、自民党長期政権時代に顕著だった官僚支配の黄金パターンは完全に復活した。

 残る希望は、野田首相が、官僚の“ご説明”に乗せられた与党会議の結論に左右されない決断をするか否かである。

権限が欲しい経産省と抵抗する文科省

 経済産業省と文部科学省の確執を理解するためには、2008年の宇宙基本法成立にまでさかのぼる必要がある。

 宇宙基本法成立のきっかけになったのは、1998年2月のH-IIロケット5号機打ち上げ失敗から始まる日本の宇宙開発分野の連続失敗だった。特に1999年11月のH-IIロケット8号機のトラブルによって気象観測を行う「運輸多目的衛星1号」の打ち上げが失敗したこと、そして2003年11月の情報収集衛星2機を搭載したH-IIA6号機の打ち上げ失敗は、政治家の間に「文部科学省は何をやっているのか」という不信感を引き起こした。

 不信感は、やがて「研究開発ばかりを進める文部科学省に、宇宙開発を仕切らせておくわけにはいかない。より実利用に即して“宇宙を政策実現のツールとして使う”仕組みが必要だ」という認識に変化していった。その結果が、2008年の宇宙基本法の成立と施行だった。

 長年、文部科学省(2001年の省庁統合以前は科学技術庁と文部省)が担ってきた日本の宇宙開発を、内閣府を中心とした政治主導の体制に組み替えるための法律が宇宙基本法である。宇宙基本法は、附則で法律施行後1年を目処に、宇宙開発体制の見直しを行うと定めている。

 その前段階として、2008年10月に内閣総理大臣を長とし、内閣閣僚をメンバーとする内閣府・宇宙開発戦略本部が設立された。とはいえ、内閣閣僚が宇宙開発のみの仕事をするわけではなく、実際の事務作業は官僚による戦略本部・事務局が行うこととなった。

 霞が関で新組織を作る際には、各官庁からの出向で人を集める。官庁にとって出向ポストは権限そのものだから、出向の椅子の数とランクは官庁の力関係や発言権の強弱で決まる。しかし、宇宙開発戦略本部・事務局発足にあたって、当時の河村建夫・内閣官房長官が文科省排除の強い意向を示し、事務局人事の主導権は経済産業省が握ることとなった。

 これは経産省にとって、宇宙分野の権限強化と文科省からの権限奪取の大きなチャンスだった。経産省は1980年代から、宇宙産業育成という名目で宇宙分野での権限強化を狙ってきたが、なかなかうまくいかなかった。日本の宇宙産業が目論見通りには育たなかったからだ。30年も宇宙産業室、宇宙産業課といった部署ができては潰れてを繰り返してきた。

 宇宙分野の権限を、たとえ内閣府経由であっても一手に押さえることは経産省にとって悲願といっても良い。経産省は、内閣府経由で、政治が興味を示した準天頂衛星システムを宇宙産業強化の切り札に選び、強力に推進すると共に、体制改革で宇宙関連の権限が文科省から新設する内閣府・宇宙庁(もちろん人事的には経産省が押さえることになる)に移るよう動いてきた。

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「権限争いの狭間に落ちた、はやぶさ2」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師