「宮田秀明の「経営の設計学」」

ICTは学生の成長を妨げる?

エクセルは便利だけれど…

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2012年2月24日(金)

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 「授業はどのくらいしているのですか」といった質問をよく受ける。実は毎学期2〜3科目と少ない。システム創成学科をつくった時、授業、つまり一方通行の座学を大幅に減らしてプロジェクト演習を増やした。

 このため教員の負担は増大した。授業は、50人の学生を相手に1人の教員が行えばいい。しかし、プロジェクト演習では50人をテーマごとに4つのグループに分けるので、教員が4人いる。

 システム創成学科が成功した理由の1つは、教員が労働強化をいとわず熱心に教育に取り組んだことが大きかった。

 それでも、私の教員生活において、授業など形式上の教育が、教育活動全体に占める割合は10%を超えたことがない。残りの90%は、私の研究室に配属された、卒業論文と修士論文に取り組む学生との研究活動に割いた。

 私は欲張りなので、学生との共同研究活動において、1)研究成果を上げること、2)教育成果を上げること、3)社会に貢献(普及)することの3つを追い求めてきた。一石三鳥を狙ってきたのだ。3つの目的を同時に追い求めることの相乗効果は高い。何よりも学生が育つ。論文のための研究経験しかない学生が大きく成長するとは思えない。結果として、私の研究室が取り組んだ研究テーマのほとんどすべてが産学連携かその卵になるものだ。

 パートナーになってくれる企業は、最初は造船業界だった。設計法の開発テーマだったり、商品開発テーマだったり。2000年以降はバラエティー豊かになった。道路公団、電力事業者からスタートし、書籍流通業、エレクトロニクスメーカー、自動車会社、通信販売会社、飲料メーカーなど数えきれないぐらいに増えた。「社会システムを科学的に設計し経営すること」をメインテーマに据えた結果である。

研究成果と社会貢献と学生の成長の掛け算

 こうして35年が経過した。最後の年の学生――修士課程の5人、学部4年生の4人――を卒業させる最終段階になった。最後だからという感慨はあまりない。淡々といつものように、時には厳しく、時には優しく、研究成果と社会貢献を考えながら学生たちの成長のお手伝いをしている。

 東大工学部では、1人の教員が同時に9人の学生を卒業させることは少ない。普通は合わせて5人ぐらいなのだ。最も人気のない教員は1人か2人の時だってある。2011年までの私の研究室はもっとたくさんの学生がいた。教員や秘書を含む研究室のメンバーが40人に迫った年もあった。この数だと、忘年会の場所探しが難しくなる。

 2011年は色々な事情があって修士課程から8人、学部から5人を卒業させた。修士論文と卒業論文の提出日は大学院と学部で決まっていて、1週間しか差がない。従って私は短期間に13本の論文をチェックしなければならなかった。幸い優秀な助教のN君がいるから随分助かった。だが、それでもかなりきつい。そんな研究指導を行いながら、沖縄や東北に出張したり、様々な産学連携プロジェクトを行ったりしなければならない。

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著者プロフィール

宮田 秀明 (みやた ひであき)

宮田 秀明

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業(現IHI)に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズ・カップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術―』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクトマネジメントで克つ!』『理系の経営学』(日経BP社)など



このコラムについて

宮田秀明の「経営の設計学」

経営には「論理」が必要である。論理を積み重ねた理系思考がイノベーションを育む。技術力を最大限に生かし、プロジェクトをまとめ上げ、新しいビジネスを創造する。「理系の経営学」を提唱する東京大学の宮田秀明教授が理系の視点による経営の要諦を語る。

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