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東日本大震災の現実を風化させないために

2012年7月23日(月)

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 東日本大震災からちょうど16カ月が過ぎた。この16カ月、私は東北の被災地へと通い続けてきたが、被災地以外でのこの巨大災害に対する思いは急速に風化していることを強く感じるようになった。福島第1原発による原子力災害とその後の電力危機、原子力発電所の再稼働に対する関心はきわめて高いが、一方で巨大津波によって壊滅した地域の人々への思いは急速に失われている。「だいぶ復興も進んできたようだ」という印象を持っている人も少なくない。

 ある仮設住宅暮らしの中年女性が、最近こう口にした。
「たくさん来てくれていたボランティの人がほとんど来なくなり、私たちは見捨てられたのかなって、さびしい思いです」
 各市町村に設置された災害ボランティアセンターを経由して支援活動した人の数は、岩手、宮城、福島の3県合計では、2010年5月の17万1900人をピークに、2012年6月には1万6800人とほぼ10分の1に減っている(社会福祉法人全国社会福祉協議会の集計)。

 3・11の未曽有の津波の襲来は、NHKテレビによるヘリコプターからのハイビジョン生中継によって全世界に伝えられ、大きな衝撃をもたらした。あの津波の下で多くの方々が亡くなったが、私たちはその瞬間を中継で見続けるという、放送史上、初めての経験をした。私は、あの映像を思い出しながら、3・11が「1000年に1度」の巨大災害であったことを反芻し、末長く被災地の支援を続けなくてはと思ってきた。

 ところが最近、「中継映像を見ていない」という人が思いのほか多いことを知った。津波発生時に自宅にいなかった多くの人たちは、ハイビジョンの大型テレビであの中継を視聴する環境になかったからだ。また、今、あの映像を見ようと思っても、YouTubeやNHKオンラインのウェブサイトには短い映像クリップがあるのみで、ハイビジョン画質であの中継をフルタイムで視聴することはできなくなっている。

 3・11の災害から真の復興を遂げるまでには20~30年かかると言われている。日本は、その復旧、復興を猛然と成し遂げることに集中しなくてはならない。単なる「復興」ではなく、新しい文明のありようを創造する「新興」を実現すれば、「さすが日本だ」と世界から評価されるはずだ。その「新興」を日本そのものの活力に結びつけるべきなのだ。また、国が、自治体が云々という論評をする一方で、私たち一人ひとりが被災地のためにできること、すべきことがいくらでもあるはずと私は考えてきた。東日本大震災は、被災地の方々だけの災害にとどまらず、私たちが暮らす国、「日本」が被った災害なのだから、と。

 被災地取材を基に復興のビジョンを探ることを目指す私の連載「ポスト3・11 日本の力」が長らく中断していたのは、取材をする傍観者の立場で「伝える」ことだけでいいのかという思いから、まずは微力でも支援活動を優先しなくてはと考えたからだった。

 多くの災害現場を取材してきたが、こういう思いは阪神・淡路大震災の時も経験している。巨大地震後の大火災で焼失した神戸市の長田地区を週刊誌の担当編集者、プロカメラマンらと訪れたが、そのすぐ近くの避難所(神戸市立御蔵小学校)などの大混乱の現状を見て、黙っていられなくなった。「避難者と家族の安否確認の情報発信のお手伝いだけでもしたい」。その思いを担当編集者にしたところ、「山根さんがそう言うのを待っていました」といううれしい返答だった。

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「山根一眞のポスト3・11 日本の力」のバックナンバー

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「東日本大震災の現実を風化させないために」の著者

山根 一眞

山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家

ノンフィクション作家として先端科学技術分野の熱い人間像を描き続ける一方、3.11被災地支援活動も人生の大きな柱です。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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