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113番目の元素を創り出した壮絶な日々(その1)

2012年10月23日(火)

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 iPS細胞を創成した山中伸弥京都大学教授に与えられたノーベル賞が日本中を沸かせているが、その授賞発表のわずか11日前にiPSと同じように「日本の力」を示し、日本人に大きな勇気や自信をもたらしてくれる基礎科学の大成果があった。「113番目の新元素を手にした」。理化学研究所が発表したこの成果は、世界の科学史に永遠に記される可能性が高いにもかかわらず、iPS細胞のような大きなニュースにはならなかった。

 山中伸弥教授のノーベル賞受賞は基礎科学の重要性を大きく訴える契機となったが、「113番目の新元素」も同じように基礎研究の価値を大きく物語る。そこで、その研究者を訪ねじっくりと経緯を聞いたが、「事実は小説より奇なり」の証言に接し、私は今も興奮が冷めやらない。

3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認
――新元素発見を「確定」する成果で、日本発の元素命名権獲得へ――

 理化学研究所(野依良治理事長)は、新たに3個目の113番元素の同位体(質量数278)278113の合成を確認しました。この278113は、これまでに理研が確認した2個とは異なる新たな崩壊経路をたどったため、113番元素の合成をより確証づけるものとなります。(2012年9月27日、理化学研究所)

 「113番元素」を創ることに成功したのは、理化学研究所・仁科加速器研究センター(埼玉県和光市)、森田超重元素研究室の森田浩介さん(准主任研究員、1957年生まれ・55歳)のチームだ。森田さんは実験核物理学者だが、青白き物理学研究者というイメージとは大きくかけ離れた大柄のいかつい体格で、遠目には格闘技のプロと言われて信じる人もいるかもしれない。だが、長年この仕事に注いできた情熱は並外れた大きなものだった。

新元素の創成への苦労と「113番元素」発見の経緯を語る森田浩介・准主任研究員。(写真:山根一眞)

 「元素の周期表」は、中学の理科や高校の化学や物理で、誰もが一度は学ぶ。私の高校時代には、その元素の順番を、「水兵離別バックの船、なーに間がある閣下はスコッチ、バクローマン」(水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素……、マンガン)と暗記した(この語呂合わせはバリエーションが多いが)。その元素の1番目は水素(=原子番号1)で94番目(=原子番号94)のプルトニウムまで続く。この94番目までが自然界に存在する元素だが、実験核物理学者たちは自然界には存在しない、さらに上の番号の重い元素の創成に挑戦し続けてきた。

 日本人が新元素を発見したというエピソードは1908年(明治41年)にあり、43番目の元素に対して「ニッポニウム」という名が提唱されたことがある。第4代東北帝国大学総長だった小川正孝氏がトリウム鉱石に見出したという元素だったが、精度の高い分析装置がなかったことなどから確証が得られず「ニッポニウム」は幻の元素名として科学史から消えていった。

 ちなみに後に、吉原賢二・東北大学名誉教授の検証により、小川氏の発見した新元素「ニッポニウム」は周期表上で「43番元素」の真下に位置する、当時は未発見であった「75番元素」であることが確認されている。

 最新の「一家に1枚周期表」(文科省がWEB上で配布)には、2010年に「コペルニシウム」と正式に命名された「112番元素」が記載されている。ドイツの重イオン研究所(GSI、ヘッセン州ダルムシュタット市)を中心とする研究チームが合成した新元素だが、最近、ロシアと米国の合同チームが「114番元素」と「116番元素」の命名権を得ているので、さらに2つが追加されるだろう。

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「113番目の元素を創り出した壮絶な日々(その1)」の著者

山根 一眞

山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家

ノンフィクション作家として先端科学技術分野の熱い人間像を描き続ける一方、3.11被災地支援活動も人生の大きな柱です。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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