• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

日本宇宙開発体制の歴史を追う

改革が必要な時、政治は後手に回った

2013年7月26日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ここまで3回にわたって、日本の宇宙政策新体制を関係者の証言から見てきた。今回は、1955年のペンシルロケット発射実験以来、日本はどのような体制で宇宙開発を推進してきたかを振り返る。

 東京大学の学術研究から始まった宇宙開発は、1960年代末に政府の推進体制が固まった。この体制は1990年まではうまく機能したが、その後、機能不全に陥る。混乱は1998年の情報収集衛星の開発開始と、2001年の省庁統合でさらに増幅された。体制改革は2008年の宇宙基本法成立と2012年の体制改革を待たねばならなかった。

 歴史を追うことで見えてくるのは、日本の政治の宇宙政策に対する不作為だ。今回は、その経緯を見ていこう。

1960年代末に日本の宇宙開発体制は成立した

 日本の宇宙への取り組みは、1955年4月に東京大学・生産技術研究所の糸川英夫教授が全長23センチのペンシルロケットの発射実験を行ったところから始まる。その後しばらく、東大が学術研究としてロケットと宇宙環境の観測機器を開発する時代が続いた。

 1960年代に入ると、設立間もない科学技術庁がロケット開発に乗り出す。きっかけは1959年9月に中京地区に大きな被害をもたらした伊勢湾台風だった。「台風を宇宙空間から観測して進路を予測できないか」というアイデアが出てきたのである。東大は構造が簡単な固体推進剤のロケットで研究を進めた。一方、科技庁はロケットの大型化が可能な液体推進剤のロケットの開発を進めた。

 やがて、どちらが宇宙を管轄するかで文部省と科技庁との間に権限争いが発生する。政治が調停に乗り出して、1966年5月に衆議院に提出された「宇宙開発に関する小委員会報告」で、文部省と科技庁がそれぞれ独立して研究開発を進める体制が確立した。

 文部省・東大は、宇宙科学を担当し、科学衛星の打ち上げ手段としてM(ミュー)ロケットを保有し、ロケットの研究も進める。科技庁は、通信衛星など実用に供する衛星の研究開発を担当し、そのための大型ロケット開発を進める。1968年5月には、国としての意思を決定する組織として、内閣総理大臣の諮問機関として総理府に宇宙開発委員会が設置された。

 1969年10月には、科技庁管轄の特殊法人として宇宙開発事業団(NASDA)が設立された。NASDAは、通信衛星(ユーザーは電電公社)、放送衛星(ユーザーは日本放送協会)、気象衛星(ユーザーは気象庁)とそれらを打ち上げるロケットを開発することを目的とした。これは同時に、日本という国にとっては、自前で衛星を開発し、打ち上げる能力を得るということを意味した。

 この時期の宇宙開発体制を図で示すと以下のようになる。

1960年代末に成立した日本の宇宙開発体制。赤い矢印は人事や意志決定の流れ

 宇宙開発委員会は総理府に所属し、内閣総理大臣に意見を述べる役割を持つ。宇宙開発委員会設置法は、第3条で「内閣総理大臣は、委員会から前条第1項の意見を受けたときは、これを尊重しなければならない」としており、事実上、宇宙開発委員会が日本の宇宙政策を決定することになっている。

コメント5件コメント/レビュー

国産のOSもロケットもこうやって米国につぶされたんですねえ。(2013/07/30)

「宇宙開発の新潮流」のバックナンバー

一覧

「日本宇宙開発体制の歴史を追う」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

国産のOSもロケットもこうやって米国につぶされたんですねえ。(2013/07/30)

官僚の縄張り争いには、うんざりします。宇宙技術研究開発においても、省益のためではなくて、国の為になすすべきことを考える官僚が生まれてきて欲しいというのが願いです。(2013/07/27)

「科技庁とNASDAは既存の体制を維持するため」、権謀術数に明け暮れたであろうことは容易に推測できる。中味の濃い本稿の続編が待たれる。(2013/07/26)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

(マンションの即日完売という)異常な状況が、普通のところに戻ってきたのです。

沓掛 英二 野村不動産ホールディングス社長