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宇宙行政を手にした経産省を覆う憂鬱

内閣府として仕事を完遂することが不可欠

2013年7月31日(水)

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 今回の宇宙行政の改革で、官僚システムの中心は、科学技術庁(すなわち文部科学省)から内閣府に移った。科学行政を担当する文科省から、全官庁の行政を調整する調整官庁の内閣府に中枢機能を移すことには、文科省による宇宙行政が研究開発に傾きすぎたことへの反省から、国全体としてよりバランスのとれた宇宙行政を実施するという意味があった。

 このため新体制の今後は、内閣府にある宇宙戦略室が、どこか一官庁へ偏ることなく行政府全体として、国が、ひいては民間が、最終的には国民が利益を享受できる宇宙行政を展開できるかにかかっている。改革に当たって政治が文科省を忌避したため、内閣府・宇宙戦略室の枢要は、経済産業省からの出向者が占めるようになった。実態としては文科省から経産省に権限の中心が移ったことになる。

 現状には2つの問題がある。1つは権限移行に伴う予算配分だ。宇宙戦略室は様々な名目で従来の文科省中心の予算配分を変えつつある。その動きは、「文科省の予算を引きはがしたい内閣府(経産省)」対「予算と権限を守りたい文科省」というステロタイプな権限争いの構図とも合致する。

 こうした見方に対して宇宙戦略室は「現在は、研究開発のための開発から、実利用へ向けた切り替えの時期で、効果が出てくるのはこれから。なにより“役に立つシステム”を作るよう関係者の頭を切り換えていかねばならない」(西本淳也室長)と反論する。予算付け替えは新しい日本の宇宙開発利用体制を組み上げるための措置という姿勢を崩していない。その一方で、予算を削られる側の文科省側からは「宇宙戦略室は行政全体のバランスを考えず、やみくもに内閣府中心の体制に持っていこうとしている」(文科省関係者)という不満が漏れてくる。民間の側には、「予算の出る元が文科省から内閣府に移っただけ」という冷めた見方も根強い。

 もう1つは、予算そのものが不足していることだ。情報収集衛星(IGS)計画は、計画が動き出した1998年以降、日本の宇宙予算(総額は2500億円規模)に600億~700億円も食い込み、予算を圧迫している。現在はIGSに加えて国際宇宙ステーション(ISS)計画の運用経費が加わっている。

 さらに宇宙戦略室が準天頂衛星システムの開発・運用を開始したことで予算繰りは厳しくなる一方だ。宇宙戦略室は、新たに防災衛星システムも動かそうとしており、そこでも新たな予算の食い込みが懸念される。

 問題の解決策は、内閣府・宇宙戦略室が、政府の宇宙計画全体を見据えて、内閣府が本来持つ省庁間の調整機能に徹することにある。その一環として、内閣官房が担当する衛星による地球観測全般(IGS計画を含む)を見直し、重複のない効率的な長期計画を組んで予算の余裕を捻出する必要がある。

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「宇宙行政を手にした経産省を覆う憂鬱」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師