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甦る日本の固体ロケット「イプシロン」

コスト高によるM-V廃止を乗り越える

2013年8月26日(月)

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が8月27日、鹿児島県・肝付町の内之浦宇宙観測所から、新型ロケット「イプシロン」初号機を打ち上げる。イプシロンは全段で固体燃料を使用する3段式の比較的小型のロケットで、地球低軌道に1.2トン、地球を南北に回る極軌道に450キログラムの衛星を打ち上げる能力を持つ。初号機は惑星分光観測衛星「SPRINT-A」を搭載する。

初号機打ち上げが迫る「イプシロン」ロケットの想像図。(Courtesy of JAXA)

 日本の衛星打ち上げ用ロケットは、糸川英夫博士のペンシルロケットにルーツを持つ全段固体燃料のロケットと、米国から徐々に技術を導入して国産化した大型の液体燃料ロケットの2種類がある。イプシロンは前者の最新作だ。

 JAXAは、低コスト化と打ち上げ準備作業の劇的なまでの簡素化を目指してイプシロンを開発した。その道のりは決して平坦ではなかった。2006年には文部科学省が、前世代の固体ロケットM-V(ミュー・ファイブ)の開発を、予算難を理由に廃止してしまった。後継機のめどを立てないままの措置だった。イプシロンの開発は固体ロケット運用の空白をくぐり抜けて2009年から始まった。

 イプシロンは、このM-Vを母体としているが、設計思想は大きく異なる。M-Vが性能第一だったのに対して、イプシロンは「ロケット打ち上げ作業を革新する」という考え方で開発されている。

ペンシルロケットから、惑星探査を担うまでに発展

 日本のロケット研究を開始したのは、東京大学・生産技術研究所の糸川英夫教授(当時)だ。同教授は1955年、研究開始に当たって液体ロケットではなく固体ロケットを選んだ。その理由は、「構造が簡単」で「研究の初期コストが安い」ということだった。当時の日本の技術水準では液体ロケットエンジンを製造するのに必要な機械加工ができなかったのである。

 東京大学は、ペンシルロケット、ベビーロケット、カッパ(K)ロケット、ラムダ(L)ロケットと固体ロケットの大型化を進めた。そして1970年のL-4Sロケット5号機で、日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功した。

 1997年から運用を開始したM-Vは、糸川ロケットの集大成と言えるロケットだ。日本初の火星探査機「のぞみ」(1998年打ち上げ、2003年に火星到達を断念)や、小惑星探査機「はやぶさ」(2003年打ち上げ、2005年に小惑星イトカワを探査し、2010年にサンプルを地球に持ち帰ることに成功)などを打ち上げた。全段固体燃料で、太陽系空間に探査機を打ち上げたのは、世界でもM-Vと、その先代のM-3SIIロケットの2機種のみである。

M-Vロケット。写真は小惑星探査機「はやぶさ」を打ち上げた5号機。(Courtesy of JAXA)

コスト高を理由にM-V廃止

 しかしM-Vの未来は、2001年の省庁統合と、2003年の宇宙3機関統合(宇宙開発事業団=NASDAと宇宙科学研究所=ISAS、航空宇宙技術研究所=NALが統合された)によるJAXA発足で閉ざされた。

 文部省は科学技術庁と合併して文部科学省となり、両者の宇宙関連予算は合体した。1998年には情報収集衛星(IGS)計画が始まり、コンスタントに年間600億~700億円を消費する巨大計画に成長した。しかし、2002年度以降、総額が増えなかったことから、ロケットや衛星を開発する既存案件のための予算が不足することになった。文部科学省が発足した2001年度の段階の試算では、2010年代にかけて年間数百億円規模の予算不足が見込まれた。

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「甦る日本の固体ロケット「イプシロン」」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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