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商業打ち上げと技術開発――2つ未来を追えるか

甦る日本の固体ロケット「イプシロン」(2)

2013年9月19日(木)

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 9月14日午後2時、「イプシロン」ロケット初号機は、鹿児島県・肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた。打ち上げは成功し、搭載された惑星分光観測衛星「SPRINT-A」を予定の軌道に投入した。

 今後イプシロンは、H-IIA/H-IIBと共に日本の宇宙開発を支える宇宙輸送システムとして利用されることになる。しかし、その前途にはいくつかの不確定要素が存在する。

 まず、どのようにして打ち上げ回数を増やすかだ。これはH-IIAと共通する課題である。イプシロンは低コスト設計を徹底したロケットだ。打ち上げ回数が増えなければ、量産効果が働かず、1回当たりの打ち上げコストをより一層低下させることができない。国の宇宙予算が頭打ちになっている現在、打ち上げ回数を増やすには、国際的な商業打ち上げ市場に進出する必要がある。しかし、そのための方策ははっきりとは見えていない。

 もう1つ押さえておかねばならない観点がある。安全保障だ。固体ロケット技術はミサイルにも応用できる。「安全保障上重要」という理由で、その技術を機密の壁の向こうに持ち去れば、技術革新を停滞させることにつながる。イプシロンは、東京大学のロケットというオープンな学術研究から始まったからこそ、ここまで先進的なロケットたり得た。コア技術を守りつつ、オープンな研究環境を維持する必要がある。

技術的にロードマップは見えている

 第1回に書いた通り、イプシロンの開発は2段階で行っている。今回、JAXAが打ち上げたのは「EX」。2017年には「E1」を打ち上げる予定だ。予算が限られていることから取った苦肉の策だが、同時に東大以来のロケット開発の伝統に沿う手法でもあった。

 東大から文部省・宇宙科学研究所へと繋がるM(ミュー)ロケットの開発では、同一機種を1年に1機打ち上げ、4~5機打ち上げたら次の機種に移るという技術開発のサイクルが成立していた。これは、大学院の修士課程と博士課程を合わせると5年で、学生が在学中にロケット開発を1サイクル経験できるという教育面からの要請だった。同時に、技術開発をたゆまず進めて、ロケットをじりじりと進歩させる意味もあった。Mロケットは「絶えず進化していくロケット」だった。イプシロンの2段階開発は、この伝統を継ぐものと言えるだろう。

 この先、技術面で何をやっていくか、ロードマップはかなりはっきりしている。 JAXAは、E1の打ち上げ前から、イプシロン発展型構想をいくつか検討している。今回の成功を受けて、検討作業はさらに加速することになるだろう。イプシロン発展型の推進剤を増やした第2段を、H-IIA後継の次期基幹ロケットの固体ロケットブースターに使用する構想もある。今後次期基幹ロケットと絡めて、イプシロン発展型の検討が進むことは間違いないだろう。

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「商業打ち上げと技術開発――2つ未来を追えるか」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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