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20年越しのジャパニーズ・ドリームを実現!

「年縞」を読み解いた在英日本人研究者(最終回)

2013年10月1日(火)

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 シリーズ最終回になる今回の原稿を編集部に送った直後の9月23日、17時32分、イギリスの中川毅さんから、

「速報です。IntCal13の論文が今日発表されました」

というメールが届いた。さらに12分後、第2信があり、あわただしい感じでこう伝えてきた。

「『論文が出た』と書きましたが、要するに『IntCal13が公表された』のと同義です」

「とびきりの野菜」から「極上のシチュー」ができた

 「IntCal」(イントカル)とは「国際的な較正曲線」のことだ。

 長さの基準は「メートル原器」、重さの基準は「キログラム原器」だが、現在~5万年前の地質時代の年代決定の「原器」が公開されたことを意味している。これを策定したのは「炭素14」による「ものさし」を決めている「IntCal」グループだ。

 水月湖の「年縞」が過去5万年までのこれまでにない最上の「ものさし」であることは2012年に国際的なお墨付きを得ていた(第1回参照)が、「IntCal」グループは慎重を期すため水月湖のデータのほかに世界各地で得たデータも統合し、いわば最終版の「炭素14」の「ものさし」の公開にこぎつけたのである。

 中川毅さんはメールで、こう述べていた。

「我々は水月湖でとびきりの野菜を手にしたが、それを使った『IntCal13』というシチューができあがったんです」

 中川さんを初め水月湖の「年縞」チームは、水月湖のデータが2013年版の「IntCal13」で大きな役割を果たすことを確信していたが、23日に公開された「IntCal13」は期待通りの内容だった。

 中川さんは、急きょ、9月29日に来日。30日午後、東京の都道府県会館で、日本の水月湖が世界地質時代の年代決定の「原器」実現に大きく貢献したことを伝える記者会見を開催した。

上:9月30日に急きょ開かれた記者会見に臨む中川さん(中)。西川一誠・福井県知事(左)や鳴門教育大学の米延仁志准教授(右)も同席した。下:水月湖の「年縞」が「IntCal13」にどのような貢献を果たしたのかを説明する中川さん

 会見には、2006年の水月湖第2次調査を支え、その後、「炭素14」によってマヤ文明の発祥年を訂正するなどの成果をあげてきた鳴門教育大学准教授の米延仁志さん、そして福井県知事、西川一誠さんも福井県からトンボ返りで駆けつけた。

 中川さんはもともと早口だが、いっそう熱のこもった口調で、「IntCal13」と「2006年の水月湖」の関係を説明した。

 「IntCal13」では、確実な「炭素14」の年代特定のために採用したデータのうち510点が「水月湖」由来だった。1998年以来公開されている「IntCal」は、「IntCal13」がいわば「第4版」になるが、「IntCal13」はこれまでとは全く重みが違うという。「水月湖」のデータが「IntCal」に採用されるのは初めてだが、これまでの「IntCal」は問題点が多々あることを前提に使われてきたが、「IntCal13」は目指していた理想の「ものさし」が得られたことを意味しているのである。

 米延さんは、たとえ話として、これまでの「IntCal」では、応仁の乱が関ヶ原の合戦の後、というようなこともあったと説明した。

 いよいよ、世界の歴史が書き換えられる日が始まったことになる。

 西川知事は、県としても水月湖の「年縞」データの学術研究を活用、さらに促進すること、水月湖の新たなボーリングを行うことを検討中であることなどを明らかにした。

 以下は、世界が「IntCal13」という理想の「シチュー」につながった「とびきりの野菜」をどうつくりあげていったのかの物語だ。

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「20年越しのジャパニーズ・ドリームを実現!」の著者

山根 一眞

山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家

ノンフィクション作家として先端科学技術分野の熱い人間像を描き続ける一方、3.11被災地支援活動も人生の大きな柱です。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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