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大事なのは経済効果よりも個人的な体験

「東京オリンピック2020」成功への助言(2)

2013年10月18日(金)

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 2020年の東京オリンピックが1964年の東京オリンピックと大きく異なる点は、このイベントの伝え方、感動の共有の仕方が思いもかけない展開をみせることだ。

「一人テレビ局」「一人ラジオ局」が中継?

 たとえば、1つの競技場から相当な数の生中継が発信されるのではないか。個人はすでにスマホという「中継発信装置」とインターネットという「伝送回線」を安価に利用できるインフラを持ち歩いているが、7年後にはその能力は飛躍的に進化しているはずだからだ。

 この簡単な装置を手に競技会場の観客席に座った者が、「一人テレビ局」「一人ラジオ局」として競技の様子を中継してしまう可能性は大きい。

 こういう中継をその競技に詳しい人が行えば、ネット視聴者の支持を得られるだろう。選手と同じ出身地者や出身学校者による応援中継、競技の技を詳しく解説する中継、言語別の中継などさまざまな個人中継が実現すれば、競技場に行けない人たちにとっては、競技の楽しみ方の選択肢が増える。これは、悪いことではない。

 視聴者は、映像だけは一般のテレビ中継で見るが、音声は会場からの自分好みのネット個人中継に頼る、というかたちになるかもしれない。

 

 もっともにわか素人アナウンサーがしゃべりまくるのでは、周囲の観客は迷惑千万だが、声が周囲に漏れないマスクのように口を覆うマイクが開発されれば、「一人中継アナウンサー」は成り立つ。「外部遮音マスク型マイク」は、実質的に禁止されている電車内や公共施設での携帯通話も可能にするので、こういうニーズが出てくれば日本のメーカーなら簡単に開発するだろう。私は、新幹線や飛行機内で音楽を楽しむ時には、周囲の騒音を消す「ノイズキャンセリングイヤホン」を愛用している。これは騒音の音波と逆位相の音波をつくり騒音を打ち消すという原理だが、マスクにこれを内蔵させれば話している声が外に漏れないようにできるのではないか。

 一人放送局のアナウンサーは、競技会場にいなくても自宅でテレビの中継を見ながら音声で解説を中継することも十分可能ゆえ、オリンピックに限らずこういうムーブメントは遠からず普及していくと思う。あの小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還の際の生中継を日本のテレビ局は行わなかったが、和歌山大学による「ユーストリーム」の中継がそれに代わったことを思うと、ビッグ・イベントでの個人中継は、おそらく音声中継から始まり増えていくという予感がある。

 一方、オリンピック競技の中継はきわめて厳しい著作権(放映権)があるため、個人による勝手なネット中継は重大な問題になりかねない。そのため、個人による「勝手ネット中継」のありようについては、早めに議論を進め国際ルールを定めておくべきだ。

 7年後のオリンピックのための準備は、個人メディアに限らず、これから7年間に何がどう進化し、人々の意識や行動様式がどう変わっていくかの予測をしっかりと立てながら進めねばならないが、こういうパーソナルな技術イノベーションへの配慮も忘れないことだ。

 ところで、東京オリンピック2020の招致委員会は、その経済効果の試算を出している。2013年から2020年までの生産誘発額は約3兆円、付加価値誘発額が約1.4兆円、雇用者所得誘発額は約7500億円、合計5兆円超。これには、大会関係者や観客の交通費、宿泊費、飲食費などの消費支出、五輪グッズやテレビなどの購入費なども含む、とある。

 こういう経済効果は大事だし、私もさらなる経済効果をもたらす提案が多々あるが、「オリンピックは儲かるから誘致しよう」「東京開催が決まったのでオリンピックで儲けようや」というだけなのは何とも寂しい。人々に元気を与える、3.11の被災地の方々に希望をもたらす、東京の国際化が進むなど謳い文句は多々語られているが、それがどういうことを通じて個人個人に反映されるのかをしっかりと見極めていかなくてはいけない。大事なのは、個人にとって東京オリンピックはどういう意味があるのか、だ。

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「大事なのは経済効果よりも個人的な体験」の著者

山根 一眞

山根 一眞(やまね・かずま)

ノンフィクション作家

ノンフィクション作家として先端科学技術分野の熱い人間像を描き続ける一方、3.11被災地支援活動も人生の大きな柱です。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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