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「顧客第一主義」は悩ましい

頭で分かっても腹に落ちない訳

2013年11月8日(金)

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 記者は質問者であって回答者ではないが、取材後の雑談時に「この件どう思います」と聞かれた場合、分かる範囲で答えている。記者の仕事に就いた28年前、「取材先から質問されたら知っている事を伝えるように」と指導されたからだ。

 企業の幹部から「次期事業計画の素案だ。ざっと目を通して意見をくれないか」と頼まれる時もある。「読んだら書きますよ。それでもいいですか」と言って突き返せれば恰好良いがそうもいかない。斜め読みをして「素晴らしい計画です」と答える手もあるが相手は落胆するに違いない。

 一通り目を通してから「よく整理されていますが顧客の視点があまり無いですね」と答えたりする。この台詞を決めている訳ではないが、資料を読むと目標数値と製品開発や組織変更の案が書かれているもののそれらが顧客にどう関わるのか大抵分かりにくい。

 「なるほど、ご指摘の通りですね」と褒められたりするが悩ましい気分になり居心地が悪くなる。冒頭に書いた通りで助言は職務範囲外と思っているからだ。そもそも「顧客の視点」という言葉は頭で理解しているだけで自分の腹に落ちていない。つい持ち出したら相手は感心して受け取ってしまった。悩ましくなる所以である。

見えない顧客の声を聞く

 取材先に失礼な物言いになるが「顧客の視点」が腹に落ちていないのは相手も同じではないかと思う。

 計画作りに関与する人たちであるから日頃から勉強されており、「顧客の視点」や「顧客第一主義」、「顧客満足」「顧客価値」あるいは「CRM(カスタマーリレーションシップマネジメントまたはマーケティング)」といった言葉やそれらが意味するところ、実現手法まで知っている。

 彼らが所属する会社も顧客第一を標榜している。Webサイトで経営ビジョンや社長挨拶を読んでみると「お客様あっての当社」といった主旨の文言が並ぶ。

 知識はあるし会社の方針でもあるのだが自分が所属する事業部門の計画をいざ立てようとすると顧客の視点がどこかに行ってしまう。

 「社長は顧客第一と言っていればいいが事業部門は綺麗事で済まない。とにかく原価低減だ」とか「顧客に接触する営業が弱く、そこから直さないといけない。我々製品部門だけでは限界」などと言いながら、できる範囲の具体策を挙げていくと視点が内向きになっていく。

 この問題は他人事ではないので筆者自身について考えてみる。筆者の仕事における顧客は読者である。読者以外の顧客もあるが分かりやすくするため読者に限定する。

 28年前に記者の仕事を始めた当初、原稿を査読した先輩に書き直しを命じられ、「そう直すと取材先が困るかもしれません」と言ったところ「お前は誰に向かって原稿を書いているのか。原稿は読者のために書くものだ」と叱られた。

 「読者の視点」「読者第一」の姿勢や考え方は存在するが仕事に慣れてくると初心を忘れがちになる。「読者のため」と意識し続けるには何らかの仕組みが必要である。

 読者は見えない。取材先と読者が重なるのは例外で、ほとんどの読者には会えない。その代わりに読者調査がある。雑誌であれば定期購読者に質問票を送り記事について評価してもらう。

 自分が書いた記事がどのくらい読まれたか、参考になったかどうか、点数が出る。点数を見てあれこれ反省し、次の記事を書く際の参考にする。読者の視点を常に意識して記者活動を続けられるはずである。

数字に一喜一憂する危険あり

 ところが数字は分かりやすい反面、結果に一喜一憂する危険がつきまとう。企画と取材と執筆に力を入れた自信作に低い点が付くと落ち込む。集計に間違いがあったのではないかと本気で疑ったりする。

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「「顧客第一主義」は悩ましい」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BP総研

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者。2009年1月から編集長。2015年から日経BP総研 上席研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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