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途絶の瀬戸際、日本のロケット技術

新型基幹ロケット、成功の条件(その1)

2014年3月24日(月)

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 アメリカではスペースXが非常に速いテンポでファルコン9を改良しつつある(スペースX、2連続静止軌道向け打ち上げに成功(2014年1月10日記事)参照)。3月30日には、垂直着陸実験機「グラスホッパー」の成果を盛り込んだ「ファルコン9」が初飛行する予定だ。同打ち上げでは第1段は回収せず、海面への軟着水を目指す。

 一方日本では2014年度から、H-IIAの次の世代のロケット「新型基幹ロケット」の開発が始まる。初年度予算は70億円。総開発費は1900億円を予定している。

 開発目的には、打ち上げ事業の「自律的かつ持続可能な事業構造への転換」が掲げられ、そのための方法として「H-IIAの約半額の打ち上げコスト」「一桁高い信頼性」などが設計目標となった。ところが、現状では開発目的と設計目標の間をどうやって結ぶかがはっきりしていない。本来ならば安さや安全性といったロケットの強みを、どうやって事業構造の転換のために使うかという戦略が必須なのである。

 そのためには種子島空港の拡張に代表される、複数省庁にまたがる省庁横断的な施策が必須となる。省庁横断的な施策の策定と実施は、省庁間の調整機能を持つ内閣府に設置された、宇宙戦略室と宇宙政策委員会の存在意義そのものだ。

日本のロケット技術は途絶の瀬戸際にある

 新型基幹ロケットは、一部ではすでに仮称「H-III」とも呼ばれている。基本的な構想は2003年のJAXA発足時点から存在したが、H-IIA6号機の打ち上げ失敗(2003年11月)への対応や、当初は十分な性能が出ていなかった第1段エンジン「LE-7A」、過大な振動が出ていた第2段エンジン「LE-5B」の改修に時間をとられ、さらに2007年の宇宙基本法成立以降は、体制改革が先行したために、開発開始が2014年度までずれ込んだ。初打ち上げは2020年度を予定している。

 予算が逼迫する中で、新ロケット開発が始まる大きな理由は、開発の間隔が空いたためにJAXAとメーカーの双方で開発経験者が引退の時期を迎えて、「このままでは開発経験が途切れ、技術力が低下する」という危機感がロケット関係者の間で共有されたことだ。

 現在、H-IIロケット(1985年開発開始、1994年初号機打ち上げ)に新人として参加した技術者達が50代半ばになりつつある。彼らゼロからロケット開発を立ち上げた経験者は今後数年で開発現場を離れるところに来ている。H-IIAはH-IIの低コスト版であり、大幅な設計変更を行ったとはいうものの、ゼロからの開発ではない。H-IIBは、H-IIAの主要部分を再利用して大型化したもので、開発要素はさらに少ない。

 当初、内閣府・宇宙戦略室は「ロケットは輸送手段であり宇宙開発利用の目的ではない。H-IIAを継続して使い続ければ事足りる」という意向だったが、「ゼロからの開発経験を次世代につながないと、日本は大型液体ロケットを作れなくなる」というロケット関係者の切迫感が、最終的には宇宙戦略室や宇宙政策委員会を動かした。

事業構造の転換という目標からロケット仕様を策定

 新型基幹ロケットの開発目的は、「自律的かつ持続可能な事業構造への転換」とされている。背景には官需の大幅増加は見込めない一方で民間市場からの打ち上げ契約獲得が遅々として進まない現状を、打ち上げ価格の低下を持って打破し、民需も含む安定した打ち上げ需要を確保してロケット打ち上げを継続していこうという考えがある。

次期基幹ロケットを開発する目的は、ロケット打ち上げ事業構造の転換にある(新型基幹ロケットに関する検討状況について、2013年9月4日:文部科学省・宇宙開発利用部会資料より)

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「途絶の瀬戸際、日本のロケット技術」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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