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内部犯行に直面し「社員への愛が足りなかった」と反省した社長

2014年7月28日(月)

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 「社内の顧客情報を持ち出し、売り払って金に換えた社員に『なぜだ』と聞いたところ、『オートバイが欲しかった』と答えました。それを聞いて『そんなことなら言ってくれ。オートバイくらい買ってやったのに』と思いましたが、すぐにいやいや、そうではないと気付きました。悪いのは社長の私です。社員への愛が足りなかった」

 7月に表沙汰になった情報漏洩事件について、日経コンピュータ編集部出身の後輩と話していたとき、冒頭の逸話を教えてくれた。数年前、情報漏洩を起こした企業の社長に取材をした際、そう聞かされたという。

 信心深い社長であったため表現が極端に思えるが、色々と考えさせられる発言である。顧客情報の漏洩によってその企業が被った損失は金額に換算できないくらい大きかった。オートバイの1、2台分の支出で済むのであればすぐにでも支払おう。当初こう考えた社長だったが、いったん漏洩してしまった以上、後の祭りであった。

 「社員への愛」とはどういうことだろう。社員のやる気を引き出し、待遇を改善し、社員全員が前向きに働く雰囲気を作り上げることだろうか。それができていれば、あるいはそれに向かっていれば、内部犯行は起きなかったかもしれない。

真面目に働くことで未来は開けるか

 隣人愛ならぬ社員愛を説いた社長の話を後輩から聞く前に、筆者は「(内部犯行を防ぐ)根本の対策は従業員とりわけ情報管理に直接携わる担当者の士気を高めておくことだ。これは経営者や代表者の仕事である」と本欄に書いた(「5分で読める『情報管理の要諦5点』」参照)。

 「情報管理に直接携わる担当者」が自社の社員であろうが、外部委託先の社員であろうが同じことある。情報管理の業務は本来社内の人員がすべきものだが、外部委託を止めて社内でこなすようにしたとしても、担当者の士気が低ければ引き続き危険は残る。

 「5分で読める『情報管理の要諦5点』」の読者コメント欄に、担当者のやる気に関して指摘が書き込まれたので紹介したい。読者の文章は一部編集している。

読者の意見

 情報管理における人の問題を考えたとき、技術面の防御をこらし、「必ずみつかる」と思わせておく、心理的な対策は当然大切です。しかし相手もIT技術者、技術面で抜け道のない完全な防御手段はありません。

 将来にわたって正直に真面目に働くことで未来が開けるのだという思いを担当者に持たせることが大切です。ぎりぎりのところで、ずるをして得られる報酬とずるをしないで今後得られる報酬を天秤にかけたとき、「(つかまって職を失うかもしれない)リスクを負って得られる金よりも、将来にわたって得られる有償無償の利益の方が多い」と思わせられれば対策は成功なのです。逆に言うと、それを持たせられないからこそ、こういった問題が起きるとも言えるでしょう。

コメント9件コメント/レビュー

「データを持ち出そうと悪意を持ってあたればたいてい突破できてしまう。」と書いた者です。立て続けに私のコメントに答えてくださってありがとうございます。とってもうれしいです。▽「報酬を念頭においていると思われる」とのことですが、そのとおりです。7月の事件では報道によると犯人の奥さんがもう少し広い家に住みたいと話していたというものがありました。借家だったようなので、収入が少ないということでしょう。借金の額も数十万円程度だったような報道です。記事の最初の例もバイクがほしくてですよね。バイクも特別なものでなければ数十万円程度だと思います。数十万円のために盗みをしようとは思わない程度の報酬を払っていれば事件はおきなかったと思います。それに正社員なら盗みをして懲戒免職になれば退職金がなくなります。しかし、派遣では退職金を失う心配はありません。▽今回の事件で記事にあるように現場の技術者の報酬を引き上げるべきという意見が出てきたのは現場でまじめに仕事をしている人たちの率直な考えが出てきたのだと思います。かなり前に特許の権利を持った社員が相応の対価を求めて会社を訴えるという現象が相次いだことがありました。そのときも訴えた人たちは社内で冷遇されていたような印象です。インクジェットプリンタの基本特許をとった人がキヤノンの副社長になったように、相応の対応をしていれば会社に特許の対価を求めて訴えたりしないでしょう。今回の情報の持ち出しも根は同じだと感じます。その仕事の価値や重要度を理解できず、相応の対価を与えない経営陣にはそれ相応の報いがくるということです。▽前の記事のコメントにも書きましたが、IT関係の現場を知った役員が居ない経営陣になるのは内部で分る人を育てる努力をしていないからです。今居る経営陣に分れといっても無理ですから、どこからかつれて来てしのぎながら内部で育てことをするしかないでしょう。それを出来ない企業はずっと同じような情報管理の危険がつきまとったままだと思います。(2014/07/29)

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「内部犯行に直面し「社員への愛が足りなかった」と反省した社長」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BP総研

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者。2009年1月から編集長。2015年から日経BP総研 上席研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「データを持ち出そうと悪意を持ってあたればたいてい突破できてしまう。」と書いた者です。立て続けに私のコメントに答えてくださってありがとうございます。とってもうれしいです。▽「報酬を念頭においていると思われる」とのことですが、そのとおりです。7月の事件では報道によると犯人の奥さんがもう少し広い家に住みたいと話していたというものがありました。借家だったようなので、収入が少ないということでしょう。借金の額も数十万円程度だったような報道です。記事の最初の例もバイクがほしくてですよね。バイクも特別なものでなければ数十万円程度だと思います。数十万円のために盗みをしようとは思わない程度の報酬を払っていれば事件はおきなかったと思います。それに正社員なら盗みをして懲戒免職になれば退職金がなくなります。しかし、派遣では退職金を失う心配はありません。▽今回の事件で記事にあるように現場の技術者の報酬を引き上げるべきという意見が出てきたのは現場でまじめに仕事をしている人たちの率直な考えが出てきたのだと思います。かなり前に特許の権利を持った社員が相応の対価を求めて会社を訴えるという現象が相次いだことがありました。そのときも訴えた人たちは社内で冷遇されていたような印象です。インクジェットプリンタの基本特許をとった人がキヤノンの副社長になったように、相応の対応をしていれば会社に特許の対価を求めて訴えたりしないでしょう。今回の情報の持ち出しも根は同じだと感じます。その仕事の価値や重要度を理解できず、相応の対価を与えない経営陣にはそれ相応の報いがくるということです。▽前の記事のコメントにも書きましたが、IT関係の現場を知った役員が居ない経営陣になるのは内部で分る人を育てる努力をしていないからです。今居る経営陣に分れといっても無理ですから、どこからかつれて来てしのぎながら内部で育てことをするしかないでしょう。それを出来ない企業はずっと同じような情報管理の危険がつきまとったままだと思います。(2014/07/29)

しっかりと管理されて厳しい訓練を受けた兵士にも、組織と仲間を愛する心を持った者が多く存在しています。社員への厳しい管理と、社員の愛社精神(会社への帰属意識)は相反するものではありません。ルールを乱す行為は、社員そのものの人間性によります。企業経営者は、社員に対する愛よりも、厳しい規律によって、人間味を持ってコントロールしていくべきだと思います。(2014/07/28)

個人情報保護法を改正して、「個人情報管理責任者については国家資格を制定し、資格授与・更新の前提として借金・ギャンブル癖・前科等の経歴調査を義務付ける」としないとこの問題は根絶できないと思います。つまり、国家資格取得の一環として定期的な「身辺調査」を国で保証するしか打つ手が無いということになります。(2014/07/28)

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