安倍政権、宇宙の安保へ「手形」を切る

新宇宙基本計画の虚と実(その1)

 安倍晋三政権により、日本政府の宇宙開発への姿勢は大きく変化した。

 昨年から作成作業が続いていた新たな宇宙基本計画は1月9日に開催された、閣僚レベルの会合である宇宙開発戦略本部会合において正式に承認された。現在、新宇宙基本計画に基づいた2015年度宇宙予算案が作成され、国会における審議を待っている。

 安倍首相は昨年、安全保障面での政策強化を主軸とした新たな宇宙基本計画の策定を指示した。さらに新計画は5年の中期計画ではなく今後20年を見据えた10年の長期計画とする方針を示した。

「宇宙基本計画工程表」に注目

 結果として出来上がった新たな新宇宙基本計画は、かつてないほど安全保障面での宇宙利用に傾斜したものとなった。「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍首相は、自分の任期の間に今後20年間の宇宙政策を自分の望む強面の方向へと規定したかのように見える。

 その一方で新宇宙基本計画は、安全保障を押し立てる政権に対して、厳しい要求を突きつけてもいる。

 今回の宇宙基本計画は単一の文書ではなく、計画文書本体と「宇宙基本計画工程表」という表とから構成されている。実はこの表こそが、宇宙基本計画の核心といってよい。というのも、表には今後20年に渡って日本が実施すべき宇宙計画がひとつひとつ具体的に記載されているからだ。

 この表が計画本体と同時に、内閣総理大臣以下閣僚がメンバーである宇宙開発戦略本部会合で承認された意味は、非常に大きい。今後政治は、記載された具体的な計画のすべての実施に責任を持たねばならなくなったのである。つまり、政治としてこれらの計画に「予算を付けない」という選択肢は許されなくなった。これは過去に例のない状況だ。

 しかし工程表は同時に、宇宙開発が「誰も通らない山奥に立派な道路を作る」に類する“悪しき公共事業化”する可能性も宿している。さらには特定機密保護法の施行により、第三者による検証が不可能になることも考え得る状況となっている。

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著者プロフィール

松浦 晋也

松浦 晋也

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

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