日本が昨年12月閣議決定によって承認した新たな「防衛計画の大綱」は、名指しこそ避けたが中国を脅威ととらえ、対米同盟強化の中で自衛隊の大編成替えを打ち出したものだった。
今年2月日本から外相、防衛庁長官が訪米し米国国務・国防両長官と会い発表した共同声明は、「台湾海峡問題の対話による平和的解決」を、「日米双方共通の戦略目標」だと明言した。
中国は3月成立させた反国家分裂法で、台湾独立を防ぐには「非平和的方式」を辞さないと明記している。だが有事の際米国ばかりか日本まで敵に回す恐れが現実化すると、台湾に対し軍事力を使うことは極めて困難となる。
北京の目に日本は、政治・軍事力をにわかに強化、米国と共同し中国牽制へ乗り出した国として映る。反日暴動を容認したのは、この際世界へ向けて日本の不徳を訴え、勢いをそぎたかったのだと思えば動機を解せる。事実タイミングは計ったかのようだった。日本の首相や外相が、国連安全保障理事会で常任理事国となるのを目指して外交攻勢をかけようとする、その矢先をとらえたものだったからである。
ところが日本では、中国が日本をそのように見ているかもしれないことについて認識、議論ともに乏しい。日本が軍事的に今何をし、これから何をしようとしているかに対するメディアの報道は低調で、国民の関心は低い。
日本は米国の「特上同盟国」

事実はというと、日本は今や米国が「並の同盟国ではない、特上同盟国(メガアライ)であるとして頼ろうとする存在」(米軍事コンサルティング会社コーエングループのジェームズ・ボドナー氏)になっている。メガアライとされる国は世界中でほかに、英国と豪州を数えるのみ。近年の相次ぐ行動によって日本がこのような地位を得たことは、北京によく見え、日本人自身に案外見えていない疑いがある。
民間有識者からなる懇談会の答申を受け成案化された新「大綱」は、対処の必要な脅威として「弾道ミサイル攻撃」「ゲリラや特殊部隊による攻撃」を掲げた後、「島とう嶼しょ部に対する侵略」と、周辺空域に対する領空侵犯、それに「領海内で潜没航行する外国潜水艦」の存在を特筆している。
ここで島嶼部とは洋上交通路・大陸棚資源の保全にとって重要な尖閣諸島近辺を、さらに潜水艦とは昨今日本近海への出没が目立つ中国のそれを指すことは言うまでもない。日本はこのようにして安全保障基本文書の中で、脅威の源が冷戦下のようにロシア(旧ソ連)でなく、その少なくとも1つは中国であるとの認識を明示している。
かつ大綱の基となった「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・荒木浩東京電力顧問)の報告は、「島嶼防衛や周辺海空域における軍事力による侵害の排除」を、最重要項目に掲げていた。ミサイル、ゲリラ以上の扱いで、ここには中国に対する警戒感が一層あらわだったと言ってよい。
陸上自衛隊ではこうした脅威認識の変化を受け、大再編が進みつつある。陸上幕僚監部がまとめた「陸上自衛隊改革の方向」という文書によれば、それは「部隊の地理的重点正面」を「北から南へ、東から西へ」移し、北海道の勢力を削って「日本海側及び南西諸島正面の配備を強化」するものだ。
「重装備から軽装備へ」との方針が同時に示され、戦車の数を4割減らす目標が掲げられた。これは陸自のエリート像自体を変えてしまうもので、中国からの脅威に応じる決意が並々ならないものである証拠だ(12ページ)。
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