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重大事故はまた起きる

JR西日本、ブレーキなき組織の暴走体質

  • 金田 信一郎,中野 貴司

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2005年5月16日(月)

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JR西日本が引き起こしたJR史上最悪の事故。だが、人々はその後の会社の対応に再び驚愕することになる

 そのカーブが近づくと、ベテランの運転士ですら緊張感が高まるという。

 「魔のカーブ」。それは100人超の死者を出したJR西日本の尼崎脱線事故現場ではない。大阪府の南端、同社の阪和線にあった。

 大阪の天王寺駅を出発した特急「オーシャンアロー」は、阪和線の終点、和歌山駅を目指して61kmをノンストップで走り抜けていく。そして直線を時速120kmで飛ばして和歌山県との県境に近づいたところで、列車は急ブレーキをかける。大きく左に旋回し、カーブの途中にある和泉鳥取駅に突っ込むように通過していく。

 「ノロノロ運転で走る時代の路線だよね」。運転士は苦笑する。

 特急が走る路線に、これほどの急カーブが存在することには訳がある。

 阪和線が開通したのは1930(昭和5)年のこと。大阪の中心から南へと延びるローカル線は、そもそも時速120kmもの高速で走ることを考えて敷設されていない。「103系」という40年前に開発された列車が、今でも現役で走っているほどだ。

 ところが、時代が変わって「鈍行列車」と同じ線路の上を、特急や快速が走り抜けていく。特に、94年から関西国際空港へのアクセス鉄道となると、特急や快速の本数は急増した。18年前の民営化時に平日124本だった快速列車は、今では倍の数に上る。過密ダイヤ、長い直線の後の急カーブ、そして新型自動列車停止装置(ATS-P)の未整備区間…。和泉鳥取駅は、尼崎脱線事故の状況と酷似している。

 危険なカーブ——。JR西日本の運転士や車掌たちは、京阪神路線網「アーバンネットワーク」に、こうした地点が複数あると証言する。

 大阪の中心部から東に延びる大和路線(関西本線)。ここにも、脱線現場とよく似た場所がある。奈良駅を出発して郡山駅方面に走り出すと、約3kmの直線がある。ここで一気に加速すると時速120kmに達するが、直後に曲線半径400mの左カーブが出現する。その手前で急ブレーキをかけて85kmまで減速しなければならない。ここも運転士が恐れるカーブの1つだ。

「F1で田舎道を走る」

高速化が各路線で進められてきた JR西日本(京阪神)の主なスピードアップ

 「日本中の危険なカーブを探すと、JR西日本のアーバンネットワークに集中している。このことは決して偶然ではない」

 ある鉄道関係者は、そう言ってはばからない。それも、大阪周辺にあるかつてのローカル線に集中しているという。福知山線も、86年までディーゼル機関車が走っていた路線だ。旧国鉄時代、快速列車は1本も走っていなかった。

 民営化を境にして、状況が一変する。89年に快速が走り始め、その後、高速化が進む。97年に大阪・梅田地区を通るJR東西線が開業すると、そこから学研都市線にもつながり、「通勤大動脈」へと変貌を遂げた。そして、高速化と増便を繰り返して、乗客を増やしていく。阪和線や大和路線も、同じような経緯をたどって、貧弱なローカル線から、主要路線へと脱皮してきた。

 ところが、その過程で生まれた歪みが、今、JR西日本を大きく揺さぶり始めている。

 「下の部分(線路や路盤)が改良されていないのに、上の部分(車両)だけが高速化されてしまった」(元JR鉄道総合技術研究所主任研究員の芳賀繁・立教大学教授)
 急カーブが多くても、さほどスピードが出ない旧型列車が走っている分には、あまり問題にならない。だが、最高時速120~130kmという新型車両を投入するとなると話は別だ。

 「極端に言えば、F1マシンで田舎道を走るようなもの。高い性能を発揮すると危険な状態に陥る」(鉄道関係者)

 にもかかわらず、JR西日本は、ローカル線時代の貧弱なインフラに大きく手をつけず、高速化と増便を推し進めてきた。この転換なくして、事故は避けられない結末だった。

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