カネボウの粉飾事件を受けて金融庁から2カ月間の業務停止命令が下った中央青山監査法人が、事実上の解体に追い込まれる可能性が出てきた。提携先で信用を補完してきた世界有数の監査法人、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が中央青山との関係見直しに動き始めたためだ。
PwC関係者は本誌の取材に対して、「中央青山との提携関係を今後1年以内に解消する可能性が高い」との考えを明らかにした。PwCは日本に独自の監査法人を新設する方針を既に示しているが、中央青山の切り捨てとも取れる提携解消にまで言及するのは初めてだ。
複数の関係者の話を総合すると、PwCの日本戦略の全貌は以下のようになる。まず第1段階として今年7月までに新しい監査法人を設立する。名称の候補は「ピー・ダブリュー・シー監査法人」。7月までに立ち上げるのは中央青山が同月から業務停止となり、監査の空白が生じるのを避けるため。新法人が中央青山の受け皿としての役割を担う目的は明確だ。
与謝野馨金融担当相は12日の閣議後の会見で、新法人について「専門知識を持った人たちが集まるか。使命感を持っているか(によって是非を判断する)」という考えを示した。金融庁も新法人を容認する公算が大きい。
PwC“直営”の新法人は具体的には、中央青山が抱える2000社を超える監査先のうち、海外企業の日本法人や、日本の国際優良企業の取り込みを進める。
ソニー、トヨタなどに照準
ソニーやトヨタ自動車、京セラ、任天堂などの国際優良企業がどれだけ新法人に鞍替えするかはまだ不透明。ただ、こうした企業の海外事業の監査にはPwCの国際ネットワークが欠かせない。新法人に乗り換える企業は多いと見られる。
もちろん、国内で監査業務を進めるためには日本の会計士の資格を持つ人材が大量に必要になる。PwCは中央青山の会計士をまとめて移籍させることでこれを賄う見通しだ。旧中央、旧青山などの出身にとらわれず、国際企業に対する監査経験や英語力などでふるい分け、最大で300〜400人程度を新法人に呼び込む。
中央青山の中で海外企業を多く担当しているのは監査5部というセクション。この部門に所属する会計士と顧客が「丸ごと移転するイメージ」という指摘もある。
PwCのシナリオ通りに新法人に顧客が一斉に移れば、中央青山に残るのは海外で事業展開をしていない規模の比較的小さな企業ばかりとなる。そうなれば、PwCにとっては、中央青山と提携を続ける理由はなくなる。
そこで、第2段階の提携解消に進む。新法人がPwCの国際ネットワークの正式な一員となることを踏まえ、フランチャイズの立場の中央青山との関係を清算する。
これまで中央青山、あずさ、新日本、トーマツという日本の4大監査法人はそれぞれ、PwC、KPMG、アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)、デロイト・トウシュ・トーマツ(DTT)という国際的なネットワークを持つ4つの監査法人(ビッグ4)と、1対1の提携関係を維持してきた。国内は日本の監査法人、海外はビッグ4という役割分担によって、国際企業の監査を滞りなく進めることができた。
PwCが独自の監査法人を日本に設け、提携関係を打ち切るということは、中央青山がこうした枠組みからはじき出されることを意味する。
また、ビッグ4が初めて自前の監査法人を設立することで、これまで閉鎖的と言われてきた日本の会計監査の世界に風穴が開く。中央青山以外の3つの大手監査法人も、いや応なく国際的な水準の下での競争にさらされることになる。
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