「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)の時と何だか似ていません?」
多忙な中を取材に応じてくれた政府高官が去り際、わざわざ立ち止まって記者にこう尋ねてきた。
発言の主は、経済財政諮問会議を取り仕切る与謝野馨経済財政・金融担当相の側近。米国発の世界金融不安が再来するのではないかとの不安を抱かずにはいられないと言う。
戦後3番目の長期に及ぶ小泉純一郎政権。末期ながら、国民からの内閣支持率も高い。政権発足当時に約1万4000円だった日経平均株価は、一時7000円台まで落ち込んだが、1万6000円前後に持ち直した。
一般に、政権末期には経済が不安定になりがち。ブラックマンデーの再来ともなれば、その余波は避けられない。だからこそ、政権中枢で経済と金融を管掌する与謝野大臣の周辺は神経をとがらせている。
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19年前と同じトリプル安
1987年10月19日のブラックマンデー。株価の大暴落は突然、やってきた。米株式相場はこの日、20%以上の史上最悪の下げを記録した。株価の急落は、東京、ロンドンなどへ次々に伝播し、国際金融市場は大混乱に陥った。
背景にあったのは、財政と貿易の「双子の赤字」を抱える米国経済への不信感。85年のプラザ合意以降のドルの急落、財政赤字を嫌気した債券相場の下落(長期金利は上昇)が、ついに株式相場に広がった。米国売りのトリプル安。急落のタイミングと速度は誰にも予想できなかったが、下落自体はある意味、必然だった。
現在の米国市場はどうか。ドルは円やユーロなどの対主要通貨で弱含み、「上がらないのが不思議」とアラン・グリーンスパン前連邦準備理事会(FRB)議長に言わしめた長期金利も緩やかながら上昇を始めている。ドル安と債券相場下落といういつか見たような風景の中、株式相場も5月11日からの2日間で2%の下落を見せる。ミニトリプル安の構図がうっすらと浮かび上がってきている。
市場の表面的な動きだけではない。米国売りを加速させる要因をつぶさに見てみると、奇妙なほどに当時の状況に似ていることが分かる。
第1に、ドルの先行きへの不安感が強まっていること。米国の経常赤字は昨年の第4四半期に年率換算で8000億ドルを超え、GDP(国内総生産)比で7%となった。87年は同3〜4%程度だったから、対外不均衡は当時よりも深刻だ。
4月の7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明で「経常黒字のある新興市場経済」の為替介入を牽制する表現が盛り込まれたとして、市場がドル売りに動いたのは、こうした背景があってこそ。「米当局がドルの緩やかな下落を容認している」との認識を市場は共有している。
敏感な投資家は既に動き出している。米国の代表的な株式投資家、ウォーレン・バフェット氏は、これまで米国に絞ってきた投資対象を日本などの海外に広げることを決めた。「(ドル安が)ソフトランディングで済むかは疑わしい」。バフェット氏は米経常赤字が未曾有のドル安を招くリスクを指摘する。
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