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情報の断絶が事故連鎖へ

シンドラーだけで終わらぬエレベーター問題

  • 瀧本 大輔

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2006年7月5日(水)

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 「過去の不具合の情報は保守事業者に引き継いでいなかった」「エレベーターの整備に必要な情報の社外への積極的な提供や、技術講習は実施していなかった」――。

 東京都港区のマンションで6月3日夜、扉が開いたままエレベーターが上昇し、16歳の高校生が自転車ごと挟まれて死亡した痛ましい事故。6月12日に開いた記者会見でシンドラーエレベータ(東京都江東区)のケン・スミス社長が冒頭の発言のように明らかにしたのは、利用者の安全のための情報提供を同社が怠ってきた事実だった。

 その後、各地でシンドラー製エレベーターのトラブルが相次いで明らかになり、一部で制御用プログラムのミスまで見つかった。

 激しいシンドラー批判が渦巻く陰で、ある重大な問題が見過ごされている。

 エレベーターの技術情報はメーカーと系列の保守事業者が“独占”し、独立系の保守事業者には渡さない――。そんな暗黙のルールが、実は大手を含むエレベーターメーカーには根強くある。独立系事業者に技術情報を提供することに消極的なのは、シンドラーだけではないのである。

 事故から4日後の6月7日。独立系事業者の業界団体であるエレベーター保守事業協同組合(18社が加盟)が、国土交通省に1通の申立書を提出した。メーカーがエレベーターの技術情報などを積極的に公開するように、指導を求めたのだ。事故で亡くなった少年を悼み、原因の究明を求める言葉に続き、こう申立書には綴られている。

 「エレベーターの業界は非常に閉鎖的であり、メーカーは自社の保守業者以外に対して、エレベーターのあらゆる情報を秘匿します」

 この言葉に象徴されるように、独立系事業者とメーカーとの間には隔絶の長い歴史がある。エレベーター市場は三菱電機や日立製作所、東芝エレベータなど上位5社の寡占が続き、「かつてはメーカーが独立系に部品を供給しないのが当然とされていた」(独立系事業者)。

 メーカーはエレベーター本体を大幅に割り引いて販売し、保守で長期的に利益を回収するビジネスモデルが一般的とされる。価格競争力がある独立系に保守の仕事を取られては、収益基盤が脅かされるのは想像に難くない。

リコール不在が問題に拍車

 1985年には、独立系事業者が東芝系の事業者にエレベーターの部品を販売するよう求め、訴訟を起こした。この「売り渋り裁判」は独立系が勝訴して決着したが、エレベーターの技術仕様だけでなく、いまだに保守や設定のマニュアルは門外不出のままという。

 ある独立系事業者は、こう憤る。 

 「エレベーターの不具合や初期不良が発覚すると、メーカーは自ら管理しているものだけ補修して、独立系には不具合の存在すら教えてくれない」

 メーカーの業界団体は否定するが、独立系事業者が情報を集めて共有したとしても、結果としてメーカーより対応が遅れることがある。最悪の場合、故障や事故が起きて初めて不具合を認識することになりかねない。エレベーターには自動車のようなリコール制度がないことも、事態に拍車をかける。

 さらにエレベーターの高機能化が新たな波紋を呼んでいる。最新の機構が採用されても、保守に必要な機器の提供にメーカーが消極的なのだ。例えば、コンピューター制御の“頭脳”に相当する制御盤は、発生した不具合の個所や内容を記録する役割も持つ。データを読み出して調べれば、保守作業をスムーズに行える仕組みだ。

 しかし、この制御盤は独立系事業者にとってブラックボックス。設定の変更や情報の読み取りには、保守専用のメンテナンスコンピューターと呼ばれる装置を制御盤につなぐ必要がある。この装置を、メーカーは独立系に原則として供給していないのである。

 「エラーの内容を読み取れないので、不具合を自力で時間をかけて探さねばならない」(別の独立系事業者)など、修理には手間がかかる。制御盤に不具合があれば、メーカー系事業者に修理や交換を依頼するが、故障の原因や修理内容は知らされないことも多い。

 業務に支障が出るため、独立系事業者は以前から大手メーカーに装置の販売を依頼してきた。しかし、メーカーは「ノウハウに基づいて独自開発したので企業機密」「多大な資金と労力を投下して独自開発したもので商品ではない」などと退けてきた。

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