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サンフランシスコから車で2時間、灼熱の太陽が降り注ぐカリフォルニア州サクラメントの街道沿いにその店はあった。
タワーレコード1号店。世界で最も有名な音楽ソフトチェーン発祥の地は、何の変哲もないロードサイド店のたたずまいだった。
そのタワーレコードが2度目の破綻に追い込まれたのは、8月20日のこと。全米89店を運営するMTSが、巨額の債務負担に耐えきれず、連邦破産法11条の適用を申請した。
それでも1号店は、何事もなかったように営業を続けている。その様子は、タワーレコードの窮状を如実に物語っていた。
「ウォルマートにやられた」
広大な店内は不気味なほど活気がない。流れる音楽は、音量が絞られている。数少ない客は、高齢者が目立つ。しかも、何も買わずに立ち去っていく。ある老人は、「近くの店に食事に来たから、ちょっと入ってみただけ」だという。10代の少年は、友達との待ち合わせの時間潰しに来ていた。
「昔は流行っていたのよ。店の外まで人がたむろしていてね」
隣の店に勤めるジェリー・コーサムは、この地に移って40年になる。そして、タワーレコードの盛衰を間近で見てきた。彼女に言わせれば、めっきり客足が減ったのは、ウォルマートのせいだという。
街道を挟んではす向かいにウォルマートがオープンしたのは2年前のこと。CD売り場は狭いが、売れ筋商品に絞って陳列している。だから、通りがかった客がCDやDVDを手に取り、買い物カゴに放り込んでいく。
サクラメント生まれのアンソニー・ターは、「2枚10ドル」というDVDを握りしめていた。
「これをタワーレコードで買ったら25ドルはするだろうな。あそこは家から近いけど、俺は新聞しか買わないよ」
確かに、値段の差は歴然としている。人気急上昇中の女性歌手、パリス・ヒルトンのCDは、タワーレコードでは13ドル99セントだが、ウォルマートは9ドル72セント。「ピンクパンサー」のDVDに至っては、タワーレコードでは28ドル99セントだが、ウォルマートは13ドル72セントで売っている。
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こうした状況を、消費者は熟知している。そして、CD専門店は「過去の業態」とささやかれる。全米レコード協会によると、音楽ソフト販売におけるレコード・CD専門店のシェアは1989年には71.7%にも上ったが、90年代に急低下し、2004年には32.5%まで落ちている。背景には、ウォルマートやターゲット、ベスト・バイといった量販スーパーや家電量販店が売れ筋商品を低価格で販売してシェアを伸ばしたことがある。それは、「その他店舗」のシェア急伸に表れている。1989年に15.6%だった数字が、2002年に専門店を逆転、2004年には53.8%と20ポイント以上の差をつけている。台頭するインターネット配信は、シェア10%突破が間近だ。
その狭間で、CD専門店の存在感は薄くなっている。そして、タワーレコード1号店を訪れる客の大半が、経営破綻に陥ったことすら知らない。
タワーレコードの栄光と挫折――。それは、「1960年代アメリカ」の華やかさを武器に海外で成長し、一方、米国内では古めかしい小売店に没落していった歴史でもある。
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