情報検索エンジンで、インターネットの世界を席巻する無敵艦隊グーグル。時代の寵児は今、あまりにも有名になりすぎたことに怯えている。
Google(ググる)――。グーグルで情報を検索するこの俗語は、今やネットで情報を検索する一般動詞になりつつある。
自社のブランド認知度を上げたい経営者にはうらやましい限りと思うだろうが、当のグーグルは冷や汗をかくばかりだ。皆が「ググる」と使えば使うほど、「Google」の商標権を失う危機が増すからだ。
グーグルはこの夏、米有力紙ワシントン・ポストに、「ググる」という表現を使わないように注意文書を送りつけた。警告は、既にワシントン・ポスト以外にも出されている。なぜなら、グーグルはマスコミやネット上を監視するパトロール活動を本格化させているからだ。
創業からわずか8年で、米国における検索シェアで約50%を誇り、2位のヤフーに2倍以上の差をつけている。そんな同社のサクセスストーリーは、「ググる」という言葉が人々の間に浸透した歴史とも言える。
会社設立を2カ月後に控えた1998年7月、共同創業者ラリー・ペイジ氏は顧客にこう語りかけている。
映画のセリフにも「ググる」
「楽しんで、これからもググり続けて下さい」
「ググる」という言葉を流行らせて、事業を軌道に乗せたい…。そんなペイジ氏の願望は現実のものとなっていく。膨大な情報が集積するネット社会が到来すると、人々はこの賢い検索エンジンに群がった。そして、ペイジ氏の思惑通り、メディアまでもが「ググる」という言葉を使い始めたのだ。
2002年、人気女優ジェニファー・ロペスが主演して話題となったハリウッド映画「Maid in Manhattan」には、親子のこんなやり取りがある。
「なんでサイモン&ガーファンクルは解散したの?」
「そんなこと、学校に行ってググれば分かるわよ」
流行語大賞の候補にも挙がった
続いて2003年1月には、米国版「流行語大賞」の候補にも挙げられた。
ところが、とんだ落とし穴があった。「ググる」はあくまでも「グーグルを使って検索する」という意味にとどまるはずだった。ところが、急速にシェアを伸ばすグーグルは、ここに来て事態が思わぬ方向に展開してしまったことに気づき始めた。
「言葉が浸透しすぎた結果、『ググる(Google)』が『情報を検索する(Search)』という意味の言葉になるリスクが出てきた」
グーグルの決算報告書には、そんな窮状が示されている。そして、こう締めくくる。
「このままでは『グーグル』という商標は失われ、誰もが使えることになってしまう」
商標剥奪で倒産も
グーグルがブランドを死守するためには、他社の検索サービスまで「ググる」と表現されないようにすることだ。なぜなら、商標登録とは、自社の商品やサービスが、他社のものと識別できなければならないからだ。
それが商標に関する世界共通の基本概念であり、この基準を満たせずに、消えていったブランド名は過去に数多ある。
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