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核実験宣言、金正日が「今だ」と考えた理由

事態を予見していた防衛庁防衛研究所主任研究官・武貞秀士氏に再びインタビュー

2006年10月5日(木)

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 10月3日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は核実験を行うと国際社会に対し宣言した。本ウェブサイトで9月8日に掲載したインタビュー(北朝鮮、核実験へのシナリオ~ワーストケースに備えよ)で、「北朝鮮の核開発には綿密なシナリオがあり、核実験へ進むのは確実」と指摘していたのが、防衛庁防衛研究所主任研究官の武貞秀士氏。再び氏にインタビューを行い、今回の核実験宣言がなぜ「今」行われたのか、そして、今後予想される推移を聞いた。

* * * * *

-- 核実験の予告宣言は、米国の金融制裁緩和を促すのが狙い、というのが大方の見方のようですが、武貞さんの視点からは別の背景が見えてくるのではないでしょうか

武貞 核実験を、米国を米朝協議の場へ引っ張り出すための道具として使おうとしている。それは正しいと思います。それが理由の半分。もう半分は、北朝鮮には明確な核戦略のシナリオがあり、それが核実験を求めているからだと私は考えています。

核弾頭装備への“着実な”ステップ

 プルトニウムを使用した核爆弾の開発には、実際の実験が欠かせない。コンピューターを使用したシミュレーションによる手法もありますが、これは米国など、核開発の経験値が高い国でなくては至難です。北朝鮮が核実験を宣言したというのは、現実的な、弾頭に搭載できる核兵器製造の最終フェイズにいよいよ入ってきたということを意味するのです。

-- その宣言が「今」、このタイミングだった理由はどう考えますか。

防衛庁防衛研究所主任研究官・武貞秀士氏
防衛庁防衛研究所主任研究官・武貞秀士氏

武貞 北朝鮮の最終的な目標と核戦略は「南北融和を演出しつつ、在韓米軍を撤収させ、自らが主導する形で南北を事実上統一する。過程で起こりうる米国の介入を排除するために、米本国に届く大量破壊兵器が必要」だと、前回申し上げました。要は「米国と戦わずに半島を統一する」ことが、彼らの軍事戦略です。

-- ええ。いきなりそう言われると、おそらく様々な疑問が出てくると思いますが、それについてはこちらをお読み頂きたいと思います。

武貞 それを前提としますと、残る半分の理由が見えてきます。

米韓に吹く秋風が金正日を動かした

 ひとつは、テポドンの発射以降のこの2カ月の間に、米国と韓国との関係がますます微妙になってきたことがある。9月中旬の米韓首脳会談で米ラムズフェルド国防長官が推進してきた「米韓連合司令部の戦時作戦統制権を韓国軍に移譲する」とのアイデアが合意に達したことや、韓国政府の対応ミスで反対運動が強まり、在韓米空軍が射爆場で訓練ができなくなっている問題、つい最近も米国のリチャード・ローレス国防副次官が「韓国は在韓米軍の経費を38%しか負担していない。最低でも50%程度、できれば75%は持ってほしい。それが嫌ならば米軍は韓国から出て行く」と発言したことがあります(編注:10月2日)。

 「これだけ嫌われているのに、体を張って韓国を守るべきなのか」、という議論が、米国内の国防関係者を中心に高まって、「まず韓国の自助努力ありきだろう」という姿勢が明確になってきている。

 これに呼応する形で韓国内でも「この流れでは米国は本当に出て行くのではないか」という意識が、有識者の間で非常に強くなってきました。一方で金大中政権を経て、盧武鉉氏の大統領就任以降、韓国では「我々(南)が寛容を持って迎えれば、同族である北と理解し合える」という雰囲気が醸成されてきましたが、その勢いがますます強まっている。

-- この2カ月の間にですね。

武貞 ええ。北朝鮮にすれば「機がまさに熟しつつある」と見えるはずです。在韓米軍の撤退が現実に見え始め、韓国の社会が北に対してかつてなく寛容になった。あと少しで、統一の果実がこの手に落ちてくるのではないかと。課題が残っているのは、自国主導で統一(のための武力行使)に出たときに、イラク、湾岸、コソボで見せたような米国の介入を阻止する手段、すなわち、ワシントン、ニューヨークに届く核兵器の開発です。そこで「開発計画を加速するために、実験を繰り上げよう」という考えが出てくる。

-- 金融制裁だけが核実験宣言の理由ではないと。

武貞 制裁は、北が実験を早める格好の理由にはなるでしょう。中国、韓国が「米国が金融制裁で締め上げるから、核実験だと言い出したではないか(=核開発は北の責任ではない)」という逃げ道を与えることもできます。実際、北朝鮮は宣言の中で「アメリカの制裁圧力がますます強まっているため核実験宣言をせざるを得ない」と繰り返していますね。

金融制裁では核実験は止められない

-- しかし、実際に金融制裁は相当のダメージを北朝鮮に与えていますよね。

武貞 ええ。北朝鮮の貿易商社は1000万円以上の取引ができなくなって、中国の取引先との間を段ボールに札束を詰めて往来している、とかの、貿易面で困っているという話はよく聞きます。北にとってベストのシナリオが、金融制裁解除と核開発の継続、であることは当然です。しかし、核開発の放棄はありえないんですね。放棄した方が目の前のメリットは大きいのですが、彼らの持つ国家統一の戦略からすれば、核兵器は絶対に必要です。中国、韓国が北朝鮮をサポートしてくれる姿勢(批判はするが、制裁はしない)を保ってくれるのならば、米国の制裁が続いても核開発を続けるでしょう。

-- 実際に核実験が行われるとしたら、どんな形になるでしょう。北朝鮮は国土が狭い。例えば臨界前核実験(核爆発を発生させない)にとどめる可能性はありませんか。

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「核実験宣言、金正日が「今だ」と考えた理由」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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ジェンスン・フアン エヌビディア創設者兼CEO(最高経営責任者)