「時流超流」

時流超流

2006年10月10日(火)

もう1つの「ソニーショック」

電池全面回収、パソコン供給やモバイル文明に影

1/2ページ

印刷ページ

 9月28日、米ロサンゼルス。ソニーで代表権を持つ3人の取締役、ハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)、中鉢良治社長、井原勝美副社長が顔を揃えた。本来はソニーが年に1回、世界各国から量販店など取引先の関係者を1000人以上招待して開くイベントに参加するためだった。

 約2カ月先のクリスマス商戦に照準を合わせ、ソニー幹部が直々に新製品をアピールする。決起大会となるべき華やかな会場だが、今年は例年になく重苦しい雰囲気が漂った。ソニーの経営を揺さぶりかねない苦渋の決断を迫られていたからだ。

先手のはずが市場から冷水

 過熱や発火の恐れがあるソニー製のノートパソコン向けリチウムイオン電池を全世界で回収・交換する――。

 今年8月以降、くすぶり続けてきた電池問題に対し、最終的に経営陣が下した判断は「全面回収」の実施だった。発表はすぐに世界中に伝わり、日本でも29日、東芝や富士通がノートパソコンに内蔵しているソニー製電池を自主回収して無償交換すると発表した。

 関係者によると、首脳陣の議論は発表直前まで紛糾したという。複数の案をストリンガー会長や中鉢社長らが繰り返し議論した。電池問題は供給先メーカーへの配慮を含め、複雑な判断材料が絡み合っていた。

 ようやく得た最終合意はソニー経営陣にとっては思い切った決断だった。供給先やユーザーの不安を取り除くための最善策を率先して講じるという意識から、発火の危険性が極めて低い製品を含めて、「疑わしきは回収」との姿勢を貫き、全面回収を打ち出した。

 だが、最初のトラブル発覚から1カ月半も経っており、米メディアや株式市場、消費者などからは「対応が後手に回った」と、全く逆の受け止め方をされた。「先手を打ったつもりなのに、なぜ理解してもらえないのか」。予想外の反応にソニーのある幹部は苛立ちを隠さない。

 突然の発表に、供給先のパソコンメーカーも困惑気味だ。富士通の黒川博昭社長は「これまで1件の発火事件も報告されていないので心配していなかった。ただ、これだけの騒ぎになり、ソニーも自主回収すると言うなら、協力はしていく」と話す。

 東芝のパソコン事業の担当者も「電池パックの安全管理は徹底しているので発火する恐れはないと思うが、回収することに決めた。まだ、回収対象となる機種が確定していないので、それが分かってから具体的な対応を始めることになる」と戸惑いを見せる。

 もう一度、事態の経過を振り返ってみよう。

 ノートパソコン世界最大手の米デルが、「ソニー製リチウムイオン電池を搭載しているノートパソコンで過熱・発火の恐れがある」として、410万個の電池をリコールすると発表したのは8月14日のこと。続いて米アップルコンピュータも、8月24日にリコールを発表した。

 ソニーはこの時点で回収・交換費用が200億〜300億円に達する見込みだと公表したうえで、「これ以上のリコールには広がらない」との見通しを示していた。呼応するように、ソニー製電池を採用している東芝や富士通も同日、「安全宣言」を打ち出し、事態はいったんは収束するかに見えた。

 だがこの間、米国では収束に向かうどころか、消費者の関心が薄れる気配は見られなかった。もともと、デルのリコール騒動以前から、リチウムイオン電池の信頼性に対する懸念が生じていたからだ。

(日経ビジネスでは「品質」に対する意識調査を実施します。アンケートは次ページにあります。ご協力ください)

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事





Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント19 件(コメントを読む)
トラックバック

著者プロフィール

大竹 剛(おおたけ つよし)

1998年日経BP社に入社。「日経マルチメディア」「日経ネットビジネス」を経て2003年から「日経ビジネス」編集部記者


このコラムについて

時流超流

日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

日経ビジネスからのご案内