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核実験実施は、日本のターニングポイントになる

武貞秀士・防衛庁防衛研究所主任研究官に聞く

2006年10月10日(火)

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 3日の核実験宣言から間をおかず、9日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は核実験に踏み切った。

 今回の実験は、関係諸国の立場やメンツを真正面から潰すものだ。日本・中国は、安倍晋三首相が訪中し「核実験に対し強い態度を取る」ことをお互いに表明、そして安倍首相が韓国を訪れたまさにその時、実験の実施宣言が出た。

 そこまでのリスクを犯す理由は何なのか。

 暴走にも見える一連の北朝鮮の行動は、同国の核戦略に基づくと主張してきた武貞秀士・防衛庁防衛研究所主任研究官に、今回の核実験をどう判断するのかを聞いた。

【武貞氏の主張については、下記記事の併読をお勧め致します】

核実験宣言、金正日が「今だ」と考えた理由(10月5日掲載)

北朝鮮、核実験へのシナリオ~ワーストケースに備えよ(9月8日掲載)

-- 9日の核実験は、先にお話を聞いた時点での武貞さんの予想よりもかなり早く行われました。まず、実験宣言に対する国際社会の受け止め方を見守ってからになるのでは、と言っておられましたね。

武貞 ええ。あのとき申し上げた「国際社会の受け止め方」の具体的な姿として、日中首脳会談、労働党創立記念日、今月21日に行われる米韓の定例安保協議会(SCM)、年末には潘基文・外交通商相の国連事務総長就任、などがあると考えていました。核実験は早くても10月20日(SCM開催に合わせて)、遅くなれば12月、と思ったのですが、日中首脳会談直後にやるとは。しかし、いかにも北朝鮮らしいタイミングだと思います。

-- どういうことでしょうか。

武貞 「北朝鮮は、他の国の意向や都合、面子にはいっさい顧慮せず、自らの理由で行動する」という傾向がある。日中首脳会談の直後、日韓首脳会談の直前で、「中国と韓国の対日外交に配慮せず」というタイミングです。中韓の体面を穢してでも、自力開発した核の実験のタイミングは自分が決めるということでしょうか。核実験は彼らいうところの「主体(チュチェ)」思想そのものです。中間選挙前の米国政府にとっては、「核保有国を増やしてしまった。ブッシュの対北朝鮮政策は過ちだった」と国民に思わせることになる。ブッシュ政権に対する当てつけとしてはこれ以上ないタイミングでした。

-- そこに合理的な理由は存在するのでしょうか

武貞 「全員が困るタイミングを狙って、困らせたい」という気分はあるでしょうし、北朝鮮の行動にある種「楽観」ぶりを見ることもできます。北が強気に出ても、米国のほうが、北をなだめるために譲歩するかもしれないという楽観主義です。しかし、北の決断の背景をそれだけだと見るのは誤りで、「合理的な戦略」に立った決断という説明が必要です。

リスクを賭けても欲しかったものは

 9月のインタビューでも同様のことを詳しく申し上げましたが、北朝鮮にとっては核実験宣言により、この1カ月でリスクは跳ね上がりました。その上での実験実施。これまで様々に援助の手をさしのべてきた中国、「包容(太陽)政策」で接してくれた韓国、この両国の態度が変わるかもしれない。そして米国のさらなる制裁強化。これは当然、容易に予想が付くリスクであり、コストです。

-- 合理的に考えればそうなります。だから今、北朝鮮の考えていることが見えなくなり、「暴走」説が出ているわけですが。

武貞 私は、この核実験実施は、北朝鮮の核開発を「協議の席に米国を着かせるためのハッタリ」「瀬戸際戦略」「暴走」と考える説にとどめを刺したものだと思います。

 国際的な制裁の輪が広がり、北朝鮮経済にダメージを与えるというコストを想定しているでしょうが、それでもその上を行くメリットがあると判断したから、核実験に踏み切ったと考えるべきでしょう。金融制裁が強化されて、今度は韓国、中国も、7月、テポドン発射のときのようには米国と一線を引いた政策をとってくれないかもしれない。それでも実験をしたと宣言をするのは、コストとリスクを補って余りある、核保有のメリットがあるからです。

 それは、核保有国になって、米国の朝鮮半島への介入を阻止する手段が完成できるからです。端的に言えば、核実験を行ったことで、北朝鮮は名だけでなく名実共に「核保有国」になってしまった。これまでは“We have nukes”といっても、非難されこそすれ真実味は「それなり」でしたが、これで、「核保有国の北朝鮮を攻撃したら、米国は核攻撃の目標になる」という論理にリアリティが出る。つまり、米国に「北の核抑止力」を信じさせるためには核実験が必須だった。

 3日の核実験宣言の中にも「北が先に核を使用することはない」と、「核保有国としての責任」を滲ませる内容が見られます。核戦略を持った核クラブの一員になることを強く意識している。

 将来、米国の軍事介入を諦めさせ、釘づけにしてしまう核の完成のために核実験をしたのだから、北の内部では、いわば「大国の仲間入り」といったお祭りムードになるでしょう。それを実現しつつある金正日の人気上昇や権威付けにもなるという計算もあるでしょう。

-- 裏返すと北朝鮮は、国際社会に対し「核保有国」としての対応を要求してくるということでしょうか。

武貞 その通りだと思います。「核保有国として、核拡散の防止に責任を持つ」とか、「核保有国に対して、核を手放せとは言わせない」くらいは言いかねないですね。

-- ここで、前回までの2回のインタビューで、武貞さんが主張する北朝鮮の核戦略と、その根拠について簡単に再掲させて頂きます。そのあと、今後の日本が取りうる対応策や、米中の動きについての予想をうかがいます。

(以下、10月3日掲載のインタビューからの要約)

武貞 北朝鮮の最終的な目標は「南北融和を演出しつつ、在韓米軍を撤収させ、自らが主導する形で南北を事実上統一する」。核兵器は「過程で起こりうる米国の介入を排除するために、米本国に届く大量破壊兵器が必要」となる。要は「米国と戦わずに半島を統一する」ことが、彼らの軍事戦略であり、その実行のためには核兵器と大陸間弾道弾が欠かせない。

-- 戦わずに統一、というが、政治体制や経済力で大きく異なる北朝鮮を、韓国が受け入れることがありえるだろうか。

武貞 韓国は金大中・盧武鉉政権を通して北への「包容(太陽)政策」を取ってきた。そして、経済成長やワールドカップでの活躍、国連事務総長を自国から出せることになったことなどで、民族的な自信を強めている。企業で言えば「サムスンはソニーともう遜色がない。ヒュンダイのクルマも、トヨタはともかく日産あたりなら互角なんじゃないか」、そんな気分が横溢している。それが事実か否か、ではなく。

 日本は経済力が弱まり、存在感が小さくなった、と彼らには見える。米国はRMA(軍事革命)の導入で、大量の兵力を前線に張り付ける形を改め、結果、やはり存在感が薄くなる。一方でロシアが資源を手に誘いをかけ、中国が市場として爆発的に成長した。

 「同じ民族同士で北と融和し、日米に頭を下げるのをやめて、中国、ロシアとつき合えば、今まで以上にうまくやっていける」。これが韓国のいまの民情。つまり、国の政策、民族としての自信に、国際環境の変化が加わって、韓国の国情は北との親和性を強めている。それを金正日はチャンス到来と考え、核弾頭開発の最終段階、仕上げに入った、私はそう見ている。

※全文はこちら

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「核実験実施は、日本のターニングポイントになる」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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