「ニュースを斬る」

ソフトバンク、“パンク”の深層

企業体質で片付けるのは安直、ドコモやKDDIにもある障害リスク

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2006年10月31日(火)

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 果敢な挑戦を始めた経営者の足を、情報システムが引っ張る──。携帯電話の番号ポータビリティー・サービスに関して、ソフトバンクモバイルが引き起こした情報システム障害は、経営のスピードに情報システムの開発や変更が追い付かないという昨今の現象の典型事例と言える。

 経営者が「ビジネスをこう変えたい」と言った時、業務内容とやり方を変え、組織を変え、情報システムを変えないといけない。ここで問題となるのは情報システムである。長年、企業が使ってきた情報システムを変更するのは大変だし、といって新システムを一から開発するのも難しい。この問題はソフトバンクに限ったことではない。

孫正義社長は最後発の参入者として打つべき手を打った

 ソフトバンクの孫正義社長を積極果敢な経営者と見るか、業界秩序を乱す乱暴者と見るか、意見の分かれるところだ。事実は、孫社長がボーダフォンの日本法人を買収、顧客が携帯電話の番号を変えずに携帯電話会社を切り替えられる番号ポータビリィー・サービスの開始とともに、一気にシェアを拡大することを目論んだということ。だが、10月23日から24日、さらに26日に相次いで新サービスと新料金を発表、勝負をかけようとした矢先に、番号ポータビリティーを支える情報システムが28日と29日に相次いで障害を起こした。

 ソフトバンクには失礼な物言いだが、世間一般の感想は「またやってくれたか」というものではなかったか。同社は以前、電話回線を使うインターネット接続サービスを大々的に開始した時にも、サービスの受付処理にからんだトラブルを起こしたからだ。また、同サービスを申し込んだ顧客情報が漏洩してしまう事件もあった。

 10月30日午後6時、孫社長は都内のホテルで緊急会見し、システム障害の原因について、「番号ポータビリティーの受付に顧客が殺到したため」と説明するとともに、顧客やNTTドコモ、KDDIの両社に迷惑をかけたと陳謝した。これも過去に見た光景と重なってくる。

 孫社長の説明を聞くと、疑問が浮かんでくる。顧客の殺到をなぜ予見できなかったのか。それほど負荷に弱いシステムしか用意していなかったのか。10月末に新サービスを相次いで発表したため、システム側の対処が間に合わなかったのではないか。そもそも、ソフトバンクは、通信というインフラを手掛ける企業として、あまりにも仕事のやり方が拙速ではないか──。

極めて難易度の高い情報システムの構築だった

 しかし、今回に限っては、ソフトバンクの企業体質というよりも、実現すべき情報システムの難易度が極めて高かったことが災いしたと言える。携帯電話会社を変更しても電話番号を引き継げるようにするには、異なる電話会社が保有する顧客の契約データを交換しなければならない。こう書くと1行で済むが、実は大変に厄介な作業なのである。

 ソフトバンクモバイルの顧客がKDDIに移りたいと言った場合、旧ボーダフォンの情報システムの顧客マスター(顧客情報を登録したデータ群)から当該顧客の契約データを抽出し、それをKDDIへ転送、KDDIはそのデータを自社の契約管理システムの顧客マスターに入力する。情報システムの専門家でないと理解いただけないかもしれないが、これは非常に難しく、危険と言っても過言ではない作業である。通常、異なる2社の情報システム間では、受発注データなどを送受信することはあっても、顧客との契約データをやりとりすることはない。

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著者プロフィール

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BPビジョナリー経営研究所研究員、コンピュータ・ネットワーク局編集委員。1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。関わった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「日経ビジネス」「経営とIT」など。「ビジネスとテクノロジーの一体化」に最大の関心を寄せる。



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